3 漁船


  漁船の賃金形態は,漁獲量の不安定性,魚価の変動性のため,水揚高に比例して配分される「歩合」賃金形態が支配的である。すなわち,固定給制をとるものは2.8%(40年5.7%),固定給を歩合給との併用制をとるもの42.3%(40年37.4%),全歩合制をとるもの54.9%(40年57.4%)である。賃金型態と漁場区分との関連をみると,遠洋漁場では固定給,歩合給併用制の方が多く,近海,沿岸の漁業では全歩合制の方が多い。歩合制には,運航経費,売買手数料等を水揚高(分配源泉)から控除するいわゆる大仲経費制をとるものがある。この大仲経費制は分配源泉に大きな影響を与え,船員の賃金額を著るしく低下させる場合があり,船員の利益を不当に害するおそれが強い。
  漁船の賃金水準を,賃金支払形態別にみたものが 〔II−(II)−16表〕である。同表からみると,賃金額は,固定給と歩合給との併用制に最も高いものが多く,最も低いのが固定給制である。賃金比率(賃金額/分配源泉)は,固定給制に最も高いものが多く,併用制では一般的に低い。蟹金比率からみると,固定給制は船員に有利であるが,賃金額そのものは低く,生産意欲の減退の現われのためか水揚高も低い。したがつて,固定給と歩合給との併用制が船員に最も有利であるが,問題は,固定給と歩合制との割合をいかにすべきか,固定給への接近に伴う生産意欲の減退をどう防ぐかということであろう。


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