3 輸出船市場の維持開発


  前項で述べたように,わが国造船業は好調を続けているが,その第一の原因は,わが国造船業が世界に先がけて造船技術の革新を行ない,各種経済船型,巨大船型,自動化船,専用船等需要動向に適合した船舶の開発に成功し,更にブロック建造方式の確立,溶接工作法の採用等建造方式の合理化を行なつて建造コストの低減に成功したため,西欧造船諸国に比べ技術面及び船価面で優位に立つたことである。
  第二としては,わが国造船業が船舶の大型化傾向を適確に予知し,適切な設備投資を行なつて大型船建造施設の整備を図つたことがあげられる。
  しかしながらわが国造船業の供給する船舶の大部分は,ばら積貨物船やタンカーであつて,比較的高度の技術を要するガスタンカー,コンテナー船などの面ではまだ一歩足りないところがある。
  さらに近年わが国造船業を取りまく国際情勢は大きく変化しつつあり,その前途は必ずしも楽観を許さないものがある。
  すなわち,西欧造船諸国は,強力な国家助成により,造船施設の整備,企業の集中,合併を推進するとともに,延払い金融を中心とした造船業保護策を実施して,国際競争力を強化しつつある。
  一方各国経済の国際化に伴つて,わが国も資本取引の自由化を推進することとなり,本年7月1日から造船業は,20万重量トン未満の造船業について資本取引の完全自由化を実施せざるを得なくなつた。このためわが国造船業への外資の進出が現実的な問題となるばかりでなく,全面的な外資の進出による労働賃金の上野,労働力の逼迫,金利の上昇を生じ,労働集約産業であり,かつ自己資本比率の低い造船業は,建造コストの上昇により重大な影響を蒙るおそれがある。
  また一方わが国造船業が輸出船建造資金の半分以上を依存している日本輸出入銀行が,財政資金の欠乏により42年4月1日から,船舶向け融資比率を従来の80%から70%に引き下げたことは,わが国造船業に対し輸出金融の面で大きな打撃を与え国際競争力にも大きな影響を与えるおそれがある。
  このような情勢の変化に対処して,わが国造船業の輸出市場の維持開発を図るためには,造船施設の合理化を図つて企業基盤を強化し,造船技術の開発を一層促進するとともに充分な輸銀資金を確保して国際競争力を一段と高めることが必要である。


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