3 設備投資


(1) 大手造船所

  主要造船所27工場における設備投資額は,31年頃に始まる船舶の大型化,高速化に対応して増大してきたが,特に近年の超大型船建造ブームによつて 〔II−(IV)−6表〕に見るごとく,さらに飛躍的に大きくなつている。
  わが国の超大型ドック建造は,36年以降タンカー専用船の大型化が進み,その需要が急増するにつれて活発になり,大型造船所の多くは,これまで一貫して設備の拡張を行なつてきた。このため,大手造船所の設備投資額は特に大型船造修施設の本格的建設期に入つた38年度以降はきわめて旺盛となつており,しかもこのうちでは船殻建造設備への投資額比率が増大しており,それまで高い率を占めていた造機部門,間接部門等への投資は相対的に低下するに至つている。
  かかる船舶の大型化に対処する設備大型化およびそれに伴う設備投資額の増加傾向は,海運造船合理化審議会の諮問第50号「今後の造船施設の整備のありかたについて」に対する答申により一層著しくなるものと思われる。
  注 海運造船合理化審議会は,諮問第50号「今後の造船施設の整備のありかたについて」に対して今後5年ないし10年先の超大型船用造修ドックについては建造及び修繕能力を上回る需要が期待できるのでそれに見合う施設の整備が必要である旨の答申を行なつた。

(2) 中小造船所

  つぎに中小造船所の設備状況について見ると,主要造船所に比べて,その合理化は著しく遅れていたが,34年に中小型鋼船合理化臨時措置法が制定され,42年3月に失効するまで同法に基づく合理化基本計画にしたがい財政資金の援助等により設備近代化が強力に推進された。
  すなわち中小造船所を対象とした調査によれば,34年度以降40年度までの設備投資額は,121億4,200万円に達している。
  また,40年度に入りその傾向が現れた設備の大型化は,内航船の大型化,近海就航船の需要増に伴い41年度も引き続いて行なわれ,3,000総トン未満の能力設備から3,000総トン以上に拡張したもの7件を数え,また,比較的規模の大きな数社については,1万総トン程度まで設備を拡張して本格的な外航船の建造造船所に脱皮しようとするものもある。
  このように中小造船所の施設の改善も着々と進みつつあるが,この中でも小規模のものは,最近木船造船所から転換したか,あるいは木船造船を兼営する造船所であつて,その造船施設は概して貧弱である。
  木船造船業の合理化,近代化については,39年中小企業近代化促進法に基づく指定業種となり,また,3,000トン未満の鋼船の製造または修理業についても41年3月同法の指定業種となつたので,木船造船業とともにその近代化の発展が図られることになつた。
  さらに,これらの施策に加え41年7月4日小型船造船業(総トン数20トン以上500トン未満の鋼船および総トン数20トン以上の木船の製造業または修繕業)における造船技術の適正な水準を確保することになり小型船造船業の健全な発達を図り,小型船の船質の向上を図ることを目的とした小型船造船業法が成立した。
  本法の成立は従来よりの諸施策と相まつて小型船造船業の設備および技術の向上に大きく貢献するものと思われる。


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