1 国際民間航空機関(ICAO)との関係


  ICAOは1944年シカゴで制定された国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づき成立した国際連合の専門機関で,国際民間航空の安全かつ整然たる発達およびその健全かつ経済的な運営を使命として戦後の世界の民間航空において大きな役割を果たしている。わが国は昭和28年10月ICAOの第61番目の締結国となつたが,昭和42年5月現在では112ヵ国が加盟している。
  41年度中に行なわれたICAOの主要諸会議中わが国が参加したものはつぎのとおりである。
 (1) ICAO特別会議 米国がワルソー条約の運送人の旅客に対する責任限度額(8,300ドル)が低過ぎるとの理由の下に同条約脱退の意思を表明したことに端を発し,41年2月カナダのモントリオールにおいて国際航空私法の統一性を確保するため限度額の改訂を目的として開催された。本会議では限度額の改訂幅につき各国その主張に大きな懸隔があつたため明確な解決を見るに至らなかつたが,この特別会議を契機として航空旅客に対する責任限度額の問題は大きく前進することとなつた。
 (2) 航空情報および航空図会議 航空情報および航空図に関する国際標準,勧告方式等の改訂を目的として41年4月13日より5月7日までモントリオールで開催された。従来,各国独自の方法で実施していた航空情報業務の統一性を確保するため新たな国際標準が採択され,わが国においても42年4月から新方式を導入することとなつた。また,わが国からは「航空図の無料交換制度」を提案し採択された。
 (3) 通信運航合同部会々議 本会議はモントリオールで41年10月4日から11月7日まで開催され,ILS(計器着陸装置)技術基準の改正,機上航法装置の最低基準,HF単側波帯による航空移動通信等19の問題について主に無線通信の技術面および通信手続の面から検討が行なわれた。
  また,自動データ方式および宇宙通信についてその研究開発体制の整備促進が強調された。
 (4) 空港および航空路施設の国際料金会議 第14回総会決議に基づき42年3月30日から4月18日までモントリオールで開催された。本会議の目的は,1956年の料金賦課原則を一層発展させ,料金による空港等の費用回収率および使用者に対する費用配分の原則等を論議し料金賦課方法の標準化を図ることにあつた。会議ではICAO当局の本問題に対する一般的見解が楽観的すぎるとして,料金政策については各国慎重な態度でのぞむべきであることが認識された。
 (5) その他 その他わが国から代表を派遣した会議としては,北大西洋定点観測船の運営上の技術的問題,運営費および新船建造計画等の検討を行なう欧州諮問委員会,英国政府主催の民間航空機の騒音軽減に関する国際会議,東南アジアの民間航空の健全な発達について論議を交す東南アジア局長会議などがあつた。


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