4 航空機の騒音対策


  近年の航空機の運航回数の増加,使用機材の大型化,ジェット化等に伴い,航空機騒音による空港周辺住民の日常生活への影響が無視できないものとなつてきたが,政府としては,この対策として東京,大阪両国際空港における深夜(牛後11時から午前6時まで)のジェット機の発着の禁止,東京国際空港における離着陸経路の規制等を行政措置として実施してきた。しかるに,最近の両空港におけるジェット機の発着量はますます増加し,昭和41年には東京国際空港においては1日当り離着陸回数298回のうち166回が,また大阪国際空港では236回のうち75回がジェット機によるものとなり,空港周辺住民および関係地方公共団体からは,従来の行政措置にとどまらず,防衛施設たる飛行場の周辺で講じられている各種の騒音補償を講ずるべきであるとの強い要望がなされるようになつてきた。
  一方,運輸大臣の諮問機関である航空審議会も昨年末航空機騒音対策部会を設置し,航空機騒音対策について慎重審議を行なつているが,41年12月には航空機騒音対策の骨子となるべき事項について概略つぎのような第一次答申を行なつた。すなわち,騒音対策の内容としては
 (1) 空港計画およびその周辺計画における対策-空港の新設またはその拡張改良にあたつては計画樹立の段階で騒音問題に対する十分な配慮をすべきである。
 (2) 航空機の運航規制-航空機騒音による影響をできるだけ少なくするためには,安全性との関連を考慮しつつ,航空機の運航に適切な規制を加えることが有効な手段である。
 (3) 消音および防音のための開発および採用
 (4) 騒音補償等の措置(イ 防音工事の助成 ロ 生活環境施設等の整備の助成 ハ 移転補償 ニ 損失の補償等)を講ずるべきであり,また,これらの諸施策の強力な推進を図るため,政府において早急に所要の立法措置を講ずる等格段の配慮を払うべきであるという趣旨のものである。
  このような情勢に対処して,運輸省としては今後積極的に航空機騒音対策を推進することとし,航空審議会の答申の趣旨をも尊重して,第55回国会に「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」案を提出し成立を見るに至つた。
  この法律は,運輸大臣は公共用飛行場の周辺における航空機の騒音により生ずる障害を防止し,または軽減するため必要があると認めるときは航空機の離着陸の経路,時間等を指定することができるものとするとともに,41年に成立した防衛施設周辺の整備等に関する法律に準じ,学校,病院等の騒音防止工事の助成,学習,集会等の用に供する共同利用施設の整備の助成,飛行場周辺の一定区域にある建物等の移転補償および土地の買入れ,農業等の経営損失の補償等の措置を講ずることにより,航空機騒音による障害の防止等を図るという内容のものである。
  運輸省としては,この法律により今後積極的に騒音対策を講じていくわけであるが,42年度はさしあたり3億円の予算を計上し,東京,大阪両国際空港周辺の小中学校の騒音防止工事の助成を行なう予定である。


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