1 航空機の検査体制


  航空機の耐空性を確保し,その航行の安全をはかるために航空局の実施する法定検査には,型式証明検査,型式設計変更承認検査,耐空証明検査,修理改造検査等があり,航空機に装備する各種装備品の法定検査には予備品証明検査,指定無線通信機器検査等がある。また,耐空証明検査のように有効期間の設定されているものについてはその更新検査がある。
  これらの検査は物件を対象とした個別検査であるが,検査対象航空機数の逐年増加およびこれに伴う業務量の増加に対処して検査の合理化,能率化を図るため,昭和35年6月1日に航空法を改正し,航空機および装備品の修理または改造の能力について,事業場ごとに行なう修理改造認定検査およびその更新検査制度を制定した。
  また,定期航空運送事業者および不定期航空運送事業者に対しては,航空機の整備についての整備規程を作成せしめ,その審査を受けて認可をうることを法的に義務づけるとともに,航空運送事業者および航空機使用事業者については,日本航空(株)の海外基地も含めて各整備基地および寄港基地における航空機および装備品の整備状況施設の管理または,使用状況等に関して立入検査を実施し,必要な場合は安全性確保のための改善の勧告を行なつている。
  さらに,航空機および装備品について,検査の結果判明した不具合事項,航空機使用者からの運用中発生した故障の報告または外国政府機関よりの是正措置についての通報等にもとづいて,それらの故障または不具合事項が航空機および装備品の安全性に重大な影響を及ぼすと考られえる場合には,耐空性改善通報を発行し,改造,修理点検,部品交換等適切な是正措置をそれぞれの航空機使用者に通報している。
  航空機および装備品の検査は,航空法施行規則付属書第一「航空機および装備品の安全性を確保するための技術上の基準」およびそれにもとづき制定した耐空性審査要領に対する適合性を審査することによつて行なつているが,近年における航空機の大型化,高速化,複雑化および近い将来における超音速旅客機の出現等は,これらの基準の設定改廃にあたつて国際間の協議が必要となり,このため,わが国も航空機製造国として国際民間航空機関の耐空性委員会の委員に選定された。
  また,欧米諸国においては,航空機および装備品の耐空性に関する二国間または多国間の協定を締結し,航空機および装備品の輸出入の便をはかつているが,わが国も38年2月1日に米国と耐空性に関する互認協定を締結した。わが国の航空機の安全行政に対する国際的認識を高め,国産機の輸出向上をはかるために,他の諸外国と互認協定を締結するよう強力に推し進めなければならない。
  法定検査は航空機検査官により実施しているが,航空機検査官は現在43名であり,検査対象件数を考慮して運輸省航空局,東京航空局および大阪航空局に配置するとともに名古屋空港事務所にも駐在させている。登録機数よりみた航空機検査官1人当りの機数は現在約20機であるが,この機数には登録されない輸出機および新設計の試作機が含まれておらず,かつ,その機数の内容も複雑な大型機が増加してきているので実情は相当な負担となつている。
  したがつて,当面の業務量に見合う要員の確保は勿論であるが,航空機の大型化,新機種の導入,航空技術の急速な進歩および国際的協力の必要性に伴い,教育および研修を強化して航空機検査官の質的向上をはかることが今後の課題である。


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