2 航空機の整備体制
航空機の整備作業は,日常点検,定時点検およびオーバーホールに大別され,その実施時間は飛行時間を基準にして定められている。特に定期航空運送事業者および不定期航空運送事業者にあつては,これらの点検作業の実施時期のほか,それぞれの作業および検査区分,その手順,整備のための設備および器具の明細,航空機の運用許容基準等について,運輸大臣の認可を受けた整備規程により規制されている。
整備作業を定められたとおりに確実に実施して航空機の耐空性を確保するためには,適正な数の十分に訓練を受けた作業員および航空法上要求される有資格整備士の確保,適切な整備施設,器具の保有,作業に対する二重確認方式または検査制度,部品補給および管理方式,設備および器具の管理方式等の確立ならびに整備方式設定,不具合是正措置等の決定のために必要な技術部門の保有または技術者の確保等の諸条件を具備することが原則であるが,機体,発動機プロペラ,各種装備品のすべてについて,オーバーホールまで事業者が自ら実施することはぼう大な設備と人員を必要とし,経済上の負担が増大し,事業の健全な発展に支障をきたすので日本航空(株)のような大企業を除いて特定物件のオーバーホールは製造会社等のそれぞれ専門の事業者に外注しているのが現状である。
海外寄港地での整備作業委託先も含めて自社整備の事業場,オーバーホール外注事業場のほとんどは,当該物件について修理改造認定を取得している。
しかしながら,小型機,ヘリコプター等の機体オーバーホールの外注先は製造業者を中心とした特定の事業者に系列化されているが,たとえば,YS-11のように各定期航空運送事業者,官庁等に共通に使用される大型機にあつては,各社各様に機体オーバーホールが行なわれているのが現状である。
今後飛行時間が累積してオーバーホールに入る機数が増大することを考慮した場合,代表的事業者が他社の機体オーバーホールを引き受け熟練した技術者の集中的利用,整備作業の高度の標準化,部品保有量も含めた過剰な設備投資の防止等により安全性の確保,経済運航の樹立をはかることが今後の課題である。
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