1 旅行あつ旋


  旅行あつ旋が外客誘致と外客の接遇の向上に果たす役割の重要性にかんがみ,外国人を対象とする旅行あつ旋業を営むには,旅行あつ旋業法に基づき運輸大臣による一般旅行あつ旋業の登録を受けなければならないことになつている。昭和42年4月1日現在,運輸大臣の登録を受けた一般旅行あつ旋業者は77社で,この年間の新規登録業者は13社である。
  一般旅行あつ旋業者の外客取扱状況をみると, 〔IV−15表〕に示すとおり,41年の取扱外客数は,延べ42万人で前年に比べ14%増となつており,また,取扱金額は68億5,700万円で対前年度比13%増となつている。
  このように一般旅行あつ旋業者の取扱高が伸びているのは,おもに旅行あつ旋業者の主催するパッケージ・ツアー(交通費,宿泊費,食事費,見物料,ガイド料その他一切の費用を含めた価格で募集する定額定コースの旅行)の利用者の増加によるものである。
  つぎに,一般旅行あつ旋業者の経営状況をみると, 〔IV−16表〕のとおり,資本構成において自己資本の比率が小さいこと,資産構成において企業規模に比して固定資産が大きすぎること,経営面において営業費用が大きすぎ営業収入利益率が低いこと等問題となる点が多い。

  一般旅行あつ旋業者の外客取扱部門においては,優秀な語学能力を有する従業員,ガイドを確保する必要があるため人件費がかさむほか,海外の旅行業者との連絡通信,宿泊施設,交通機関等の手配に多大の労力と費用を要し,そのうえ業務の季節的波動が大きいため,経営採算上きわめて不利な実情にある。このため一部の業者や外国系会社の支店等を除いては外客取扱部門で黒字を出している業者は少なく,多くは日本人客の国内旅行あつ旋業や兼業部門によつて経営採算をとつている状態である。また,海外渡航の自由化に伴い収益の大きい業務となつている邦人の海外旅行のあつ旋に重点をおく傾向もみられ,海外旅行収支改善の観点からみて好ましくない事態となつている。
  このような事態にかんがみ,旅行あつ旋業者が積極的に外客の誘致に努めるよう対外支払手段を対価として行なう旅行あつ旋に対して,41年度から外航海運,国際航空と同様に,租税特別措置法上の優遇措置が講じられているが,今後は,海外宣伝・販売活動の強化,オフ・シーズン対策の推進,観光資源および国際観光ルートの整備等にいつそう努めるとともに,過当競争を排し業者間の協調を図ることが必要である。


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