2 通訳案内


  わが国を訪れた外客に対して日本旅行を容易かつ快適なものにするとともに,日本に対する正しい知識を与え,誤つた先入観を取り除き満尾感を与えて帰国させることができるかどうかは,その旅行につき添う通訳案内業者(ガイド)の資質と能力によるところが大きい。この点にかんがみ,ガイドについては通訳案内業法により国家試験および就業免許等の制度が定められている。
  41年度末現在の通訳案内業試験の合格者の累計は, 〔IV−17表〕のとおり,4,191名に達し,このうち都道府県知事の就業免許をうけている者は,42年4月1日現在2,073名である。また,免許を受けた者のうち,ガイドの団体である日本観光通訳協会に加入している者の数は,42年4月1日現在1,280名となつている。

  ガイドの資質と能力は,国家試験の実施によつてかなりその水準が向上してきているが,実際に業務を行なうには,さらに広い知識と経験が要求される。このため,免許を取得し,または免許を取得する意志のある新規合格者を対象に日本観光通訳協会および日本観光協会が日本船舶振興会から補助金の交付を受けて短期間の研修を行なつているが,これだけでは十分ではないので,実務に従事しながら知識と経験を積むのが実情である。したがつて,今後ガイドの資質と能力の向上を図るためには,研修制度の充実強化が要請される。とくに産業観光システムの整備と関連して産業技術面にも明るいガイドの育成や,2以上の外国語を習得させる等既成ガイドの講習制度を設けることが必要である。
  つぎに,ガイドの就業状況をみると,ここ数年,1日当りの平均収入は増加を続けているが,就業日数は,来訪外客が増加しているにもかかわらず近年減少の傾向にある。これは経済的理由からガイドを雇うことが困難な中所得者層および青少年の来訪が増加したことや,パツケージ・ツアーの普及により個人ガイドの必要性が薄れてきていること等によるものと思われる。また,わが国の来訪外客数に著しい季節性があるのに伴い,ガイドの需要にも季節的変動が大きく年間を通じて安定した就業が困難となつているので,この面からもわが国国際観光におけるオフ・シーズンの解消が必要である。


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