2 交通公害


  大都市における交通公害の主要なものは,自動車排気ガスと自動車騒音によるものである。
  自動車の排気ガスは,各種の工場および事業場あるいはビルの暖房装置等と並んで,大都市における大気汚染の一因となつている。広域的な環境衛生の見地からみた場合の自動車の排気ガスによる大気汚染への影響度は明らかではないが,交差点付近の一酸化炭素による大気汚染についてみれば,地域的にはかなりの影響が見受けられる。
  すなわち41年2月に発表された厚生省の東京都内における調査によると,交通渋滞のはなはだしい汚染地区と比較的交通量の少ない住宅地の非汚染地区とについて,それぞれの地区の住民の血液中に含まれる一酸化炭素ヘモグロビン量を測定したところ,汚染地区住民の平均値は4.3%,非汚染地区住民は2.8%であり,自動車排気ガスの人体への影響は必ずしも軽視できない。これら汚染地区における大気汚染度は,当然のことながら自動車の交通量と強い相関を有している。しかし,「昭和41年度自動車排気ガス環境調査結果概要」(厚生省資料)によれば,都内板橋地区や大原地区では交通量の増加に伴つて大気中の一酸化炭素の濃度が増加しているに反し,霞ケ関地区においては,交通量がほぼ一定であるにもかかわらず,道路整備の進ちよくに伴う交通渋滞の解消により,大気中の一酸化炭素濃度は顕著に減少している。したがつて大気汚染度は交通量ばかりでなく道路整備状況によつても大きく左右されていることがわかる。
  都市における交通騒音の発生に大きなウェイトを占めている自動車による騒音は排気管,タイヤ,エンジンなどから出る音が総合して騒音を形成しているものであるが,東京都の主要交差点における騒音の実態は 〔2−2−18表〕のとおりである。これによると,騒音レベルは近年低下の傾向を示しており,この原因としては,都心において高速道路があいついで完成し,このため交通量が減少した地域がみられるほか,交通規制,車両の改善等により,騒音レベルの比較的低い乗用車の交通が中心となり,騒音レベルが低下したものと考えられる。

  自動車排気ガスと自動車騒音に対する対策については,政府,民間におけるもののほか,近年は大都市圏の地方公共団体においても種々の施策が実施に移されており,たとえば東京都は,42,43年度の予算において,公害研究所の新設,大気汚染の科学的測定,都および警視庁所管の自動車に対するアフターバーナーの率先設置等の実行をおり込んでいる。


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