2 運賃問題
民営鉄道の運賃改定については,昭和42年度において申請事業者の収支内容はもちろんのこと物価の動向および国民生活に与える影響等を慎重に考慮して検討した結果,真にやむをえない一部の公営路面電車および中小私鉄についてのみ運賃改定を行なつた。42年4月以降の改定概要は次のとおりである。
(1) 公営路面電車
各都市における公営路面電車の経営状態は,自動車交通量の激増により路面交通が混雑激化の一途をたどつた結果,路面電車の輸送能率は著しく低下し,旅客輸送量,収入とも著しく減少している。
一方,支出面については,あいかわらず,営業キロ当りについても客車キロ当りについても従業員が多く労働生産性が低いうえに総経費に占める人件費の割合が高く,いずれの公営路面電車経営都市も収支の均衡を著しく失つている。
このような収支内容を改善するため,昭和42年度においては,東京都,大阪市,神戸市,京都市,川崎市,名古屋市の公営路面電車について,収支内容とともに,財政再建計画等を慎重に検討した結果やむをえないものとして,運賃の改定を行なつた。なお,京都市については諸般の事情を考慮して43年6月20日まで20円の暫定運賃を設けた。
(2) 中小私鉄
中小私鉄の経営は,大都市交通機関としての性格を有するものその他特殊の性格を有するものを除いて,沿線人口の大都市への移動に伴う過疎化傾向,道路整備の進捗によるバス,自家用乗用車の進出が著しいため,定期旅客の微増傾向に対し,定期外旅客が漸減傾向を示しており,収入も伸び悩みの状態にある。
一方支出面においては,毎年かなり大幅なベースアップによって人件費が増加しているため総経費に占める人件費の割合が年々増加し,経営は年々悪化している。
また,定期運賃の割引率はバスに比べてかなりの高率(昭和41年度平均通勤42%,通学63%)となつており,この面もまた収支面の圧迫要因の一つとなつている。
このような中小私鉄の収支内容を改善するため,慎重に種々の角度から検討して42年度においては25社の運賃改定を行なつた。
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