3 乗務員に対する保安対策の強化


(1) 運行管理者制度

  適切な運行管理を行なうためには,事業内部における運行管理実施の責任体劇が確立さ紅ていなければならない。とりわけ,その中心となる運行管理者の果たす役割は極めて大であり,ダイヤの編成,点呼の実施,乗務員の指導監督,事故原因の究明,事故再発防止対策の樹立等の管理業務に従事している。このように乗務員の保安対策は主として運行管理者を通じて行なわれているが,運行管理者の管理能力の向上を図るため各陸運局において,毎年定期的に関係法令,事故防止対策等につき研修を実施している。

(2) 適正な運行の確保

  自動車運送事業における交通安全の確保については,行政監督の強化とあわせて事業者自身の交通安全に関する自覚と努力が必要である。そこで昭和42年12月10日から43年1月10日まで1か月にわたつて,事業者に対して,安全運転の励行,車両の保安の確保等を主眼とした「交通安全特別総点検」を実施した。この結果総点検の実施中において対前年同期と比較して重大事故の件数では20%減,死者数では14%減,負傷者数では13%減となり著しい成果が見られた。また,山梨県下における無免許の大型トラックと貸切バスの衝突事故および飛騨川における貸切バスの転落事故にかんがみ,特にバスの安全運行を確保するため,運行経路の事前把握,運行経路に適合した乗務員の配置,無理な運行計画の排除,運行中の必要な措置,無免許運転等,無謀運転の排除等運行管理について事業者の指導を強化した。また運行中の管理を徹底するため昨年,自動車運送事業等運輸規則を改正し,従来から運行記録計による記録が義務付けられているバス(乗合バスの距離100キロ未満のものを除く。),大型トラック(最大積載量5トン以上のもの車両総重量8トン以上)のほかに新たにタクシー(指定地域内にあるもの)もその対象に加え事故防止の徹底を図つた。

(3) 運転者の質の向上

  運輸者の指導教育については運送事業者の監査,運行管理者の研修等を通じてその徹底を図つているが,とくにタクシーについてはサービスの向上,安全教育を徹底するため,新たに事業者に指導主任者を選任することを義務付け,教育体制を確立し,教育の徹底を図つている。

(4) 運行管理指導センターの設置

  昭和42年度において東京と大阪に運行管理者指導センターが設置され,運転者の適性検査業務を行ない安全運転,運行管理に大きな役割を果たしているが,さらに,昭和43年度には名古屋,福岡にも同センターが設置されることとなつている。

(5) 自動車運送事業者に対する指導監督

  自動車運送事業者の使用する車両による交通事故は,その大部分が運転者の不注意に起因するものであるが,その背後的要因として自動車運送事業者における運行管理その他の事業管理の適否を看過することができない。したがつて運輸省においては事故等の原因を究明し,自動車運送事業者の輸送の安全確保体制を確立するため,定期的に運送事業者の監査を実施するとともに重大事故発生のさいは現地調査を行なつて事故原因の調査解析を行ない,あわせて事業者の特別保安監査を実施して,運行管理,車両管理等の欠陥を指摘して必要に応じて厳重な処分を行なつている。


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