1　世界海運市況

　　一方,世界の商船船腹量は,前年に引き続きかなり高い増加率を示した。世界の商船(ロイド統計による100総トン以上の鋼船)は,42年の年央において4万4,375隻1億8,210万総トンに達し,前年同期より1,361隻1,097万総トン,6.4%増加した。この増加率は41年の6.7%には及ばないが,33年および41年につぐ高い増加率である。これを船種別にみると,油送船の伸び率は6.6%で41年の9.4%をかなり下回つた反面,輸送船以外の船腹は,41年の伸び率5.3%を上回る6.3%の伸び率を示した。これはバルク・キャリアーの船腹増大が著しいためである。
　　42年の運賃市況は,上潮における世界景気の停滞により海上荷動き量全体の増加率が低かつたうえに,世界商船船腹量は高い増加率を示した結果,前年より荷動き量の減少をみた不定期船市況や船腹過剰傾向にあつた油送船市況は,ともに上期に希いては低水準(1月〜5月平均の不定船運賃指数(35年=100) 〔II−(I)−２表〕は104.7油送鉛運賃指数は49.9)にとどまつた。しかし,中東戦争が6月5日に勃発し,翌日スエズ運河が閉鎖されるに至り,6月〜12月平均の不定期船賃運指数は131.8と前年同期の24.3ポイント増,6月〜12月の油送船運賃市況は中東戦争勃発前の3〜4倍となり,海運市況は高騰した。しかし,今回のスエズ運河閉鎖は,31年の閉鎖時と異なり,世界景気の停滞期に当つていたこと,大型専用船の輸送の比重が高まつていたこと,大量のグレーン・タンカーや鉱油船等が石油輸送へ専航したこと,閉鎖が夏枯期に開始されたことなどから,31年の閉鎖時に比べると高騰の幅も期間も小規模にとどまつた。11月以降はポンド平価切下げを始めとするドル防衛策その他の国際金融不安の影響もあつて,不定期船運賃指数,油送船運賃指数はともに42年末から43年にかけて低下傾向にあり,42年平均で不定期船市況は120・5と前年の113.5を7ポイント上回り,油送船市況は113.7と前年の61.9の2倍弱の上昇にとどまつた。