3 諸外国における海運助成の現況


  最近,英国,米国などの諸外国においては,自国海運が国民経済上ないし国防上に果たす役割の重要性にかんがみ,自国海運に対する船腹拡充,船舶運航についての各種の助成の強化等が推進されつつある。また,リベリア,ノルウェーなどの各国は海運に対する規制や税制上の配慮をしつつ造船国の船舶輸出振興策である長期低利の延払制度を利用している。
  英国においては,41年1月他産業については廃止された自由償却制度が,海運業については存続されているほか,同月から産業の体質改善と国際競争力の強化のための設備投資促進策として,投資奨励金制度が設けられ,船舶の新造等のためにする資本支出に対し25%の補助金が支給されることになつた(41年以降の約2年間に9,050万ポンド(約900億円)支給)。さらに,輸出船の延払制度と同様なメリットを国内船主に与えるため,英国鉛主を対象とする融資保証制度が42年に実施され,英国船主は,投資奨励金を交付された場合でも,英国の造船所に船舶を発注すれぱ,残額についてこの制度を利用しうることとなった。
  米国においては,運航差額補助および建造差額補助の両制度(42年,43年予算はそれぞれ約700億円,500億円)を中心に手厚い国家助成が行なわれているが,米国海運の再建,商船隊の整備,積取比率の向上を図るため,補助対象船舶の拡大,優先積取制度の維持などを内容とする新海運政策が議会で審議されており,そのなりゆきが注目される。
  イタリアにおいては,従来から利子補給制度,運航補助制度(42年予算約400億円)等各種の海運助成措置が行なわれているが,さらに42年に施行された新造船法により,船舶の建改造を行なう造船所に対し,建改造コストの10〜14%補助金を支給することとし,5年間に約500億円の予算が計上されている。
  西ドイツにおいては,国際競争の激化に対処するため,従前よりさらに強力な海運助成策が検討され,利子補給の強化や新船建造に対する建造補助金または長期低利の貸付金の支給等の施策が40年以降実施に移されている。
  フランスにおいては,従来から行なわれていた特定航路補助および運航補助(42年の予算額は両者合わせて95億円),利子補給,船舶建造補助(同じく約170億円)のほか,41年よりモラン計画の一環として実施された船舶近代化補助制度があり,近代的定期船に対して船価の12%を限度として補助金(42年予算は33億円)が支給されるなど助成策が強化されている。
  また,リベリアでは他の国に比べて租税が非常にわずかであり,(船舶登録税1.2ドル1純トン,船舶税0.1ドル1純トンのみ),ノルウェーにおいては,投資準備金および所得控除制度が設けられており,また,ギリシャにおいては大幅な減免税措置が講ぜられている。
  このように世界の海運国は,自国海運の保護助成策を一段と強化し,自国商船隊の拡充を図っており,世界経済の成長の鈍化による海上荷動き量の増加率の停滞傾向とあいまつて,ますます国際競争を激化することが予想される。


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