1 総論


  昭和42年度は,内航海運にとつて経営好転の年であり,また,内航海運対策等種々の施策の進展をみた年であつた。
  41年秋ごろから活発化しはじめた内航海運市況は,その後も好況を持続し,42年度の輸送需要(はしけによる輸送を除く。以下同じ。)は,トン数で41年度に比べて21%の増加をみた。加えて,内航海運対策の浸透もあつて船腹需給は引締まりをみせたため,従来,慢性的不況状態をかこつていた内航海運もようやくその経営の改善をみた。
  しかしながら,これらの経営の改善は,内航海運対策に基づく老朽不経済船の一挙大量解撤と共同係船の実施が,わが国経済の景気上昇局面と時期的に一致し,船腹需給が均衡したことによるものと考えられる。今後,係船船舶舵の内航復帰,3か年計画に基づく公団共有船の内航市場への出現等船腹量の増加が予定されること,今後の景気の動向についてなお警戒すべき点があること等にみられるように上述のような幸運がいつまでも続くか保証の限りでないこと,最近の人件費の上昇が極めて著しいこと等を考えれば,この内航海運の経営の改善がいつまで続くか疑問である。
  このような情勢のもとで,日本内航海運組合総連合会において42年12月新たに設定された内航船腹量の最高限度に基づき,内航船の船腹調整と建造引当船の適正価格による供給を自的として,新たな船腹調整が開始されるとともに,地方,内航海運企業の自立体制の確立を目的としてさきに行なわれた内航海運業法の一部改正により,事業の許可制への切替えとそれに伴う企業の適正規模化が実施されつつある。


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