3 内航海運企業の現状
(1) 企業の実態
内航海運企業の適正規模化を図るため,内航海運対策要綱の閣議決定と,これに基づく内航海運業法の一部改正により,従来の登録制が許可制に改められた。この許可制は,新規の事業開始については,42年4月1日から施行されているが,既存事業については,44年3月31日までの猶予期間を設け,この間に許可基準に達しうるよう体制を整えることとなつている。したがつて,42年の1年間は,その体制整備の前半期として企業集約の進捗状況が注目された。
そこで,企業集約の対象となる許可(登録)内航海運業者数の43年3月31日現在の状況をみると, 〔II−(I)−13表〕のとおり内航運送業者7,846,内航船舶貸渡業者1,624,内航運送取扱業者950,以上の兼業786,計11,206となつており,これを許可制実施直前の42年3月31日現在と比較すると,内航運送業者は557業者,6.6%の減,内航船舶貸渡業者は145業者,9.8%の増,その他の増減を含めて,計401業者,2.3%の減となつており,内航運送業者については,かなりの業者数の減少をみている。
しかしながら,これらのうち,大部分は,スクラップ・アンド・ビルドに伴う一隻船主の船舶の売却および廃業によるもので,会社等の合併,協業組合の設立,個人業者の参加による会社の新設等本来の意味における企業集約は,いまだ十分な進展をみていない。43年度においては,官民協力による制度の周知,具体的なコンサルテイング活動等の進展に伴い企業集約が進むものと期待される。
(2) 経営状況
42年度の内航海運企業の経営状況は,内航海運対策の効果と日本経済の景気上昇を反映して,かなりの改善をみたが,その経営基盤は依然として劣弱である。
経営状況の推移を内航運送業を主力とする代表的企業50社についてみると, 〔II−(I)−14表〕のとおりであり,42年度には,1社平均で営業収益は41年度に比べて16%増,営業費用は同じく16%増,営業利益は同じく19%増と順調に推移した。
しかしながら,過去に累積された赤字を完全に解消することはできず,1,055万円の赤字が43年度に繰越されることとなつた。
営業収益の増加は,輸送需要が一般的に増加するとともに,これに船腹調整の効果が相乗されたことおよび調整運賃の設定による運賃適正化等によるものと思われる。
一方,営業費用の増加は,船舶の回転率の増加に伴つて運航費が増加したほか,船員費,修繕費,一般管理費等の固定経費が増加したためである。とくに船員費の増加は,近年著しいものがあり,企業経営圧迫の大きな要因となつている。
主要50社の資産および資本の構成をみると自己資本比率が41年度8.36,43年度9.27と著しく低い。これは内航海運業が船舶の建造に多額の資金を必要とする設備産業であり,しかも内部蓄積が少ないため,これらの資金をもつぱら借入金に依存せざるをえないことを示している。
このため,経営における金利の負担が著しく過大となつており売上高利益率は,8.41%,利子支払前における総資本収益率および売上高利益率は,それぞれ7.62%,9.63%と他産業とほぼ均衡しているにもかかわらず,利子支払後税引前における総資本収益率および売上高利益率は,それぞれ2.30%,2.91%ときわめて低水準にある。
|