5 船腹量の調整
内航海運においては,慣性的な船腹過剰がその体質強化を妨げる宿弊とされていたが,一連の過剰船腹対策の推進と国内経済の景気回復とにより,船腹需給はここ1〜2年のうちに著しい改善をみた。
![]()
しかしながら,従来,鉛腹量の告示が年末に行なわれているため,当該年度の船腹需給に対する効果が薄かつたうらみがあり,42年度においては,一部貨物について一時的に船腹需給が強い引締りをみせる現象も生じた。このため,適正船腹量及び船腹量の最高限度の検討の時期をできるだけ早めることとなり,昭和43年度以降5年間の各年度の適正船腹量及び船腹量の最高限度は,本年8月10日につぎのとおり告示された 〔II−(I)−17表〕。
![]()
これによると,内航船腹の過剰状態は,昨年度に引き続きかなり改善されていることがわかる。このような船腹需給の改善は,さきにもふれたように,昭和39年12月以来引き続き船腹量の最高限度を設定し,船腹量の増加を厳しく抑制してきたこと,昭和41年5月に閣議決定された内航海運対策要綱に基づく老朽不経済船の一挙大量解撤,共同係鉛により抜本的な過剰対策が実施されたことと,41年秋以降回復しはじめたわが国経済が42年度においても引き続き高水準に推移し,内航の輸送需要も大幅な伸びを示したこと等の原因によるものであり,一時的要因による面が大きかつたものと考えられる。このため船腹量の最高限度の設定の必要性については,かかる実情を考慮するとともに,他方,昭和42年9月からの景気調整策が次第に各部門に浸透しつつあり,すでに内航の荷動きにその影響が現われつつあること,内航海運対策要綱に基づく薬局係船が解除されるとともに,一挙解撤に対応する新鋭の船舶整備公団共有船が内航市場に出現しつつあること,内航海運業の許可制への切替え,合併協業化の促進内航海運組合の育成強化等企業体質の改善対策がいまだその途上にあること等内航海運業の実情及びこれをとりまく外的環境を考慮すると,いまかりにこれを廃止した場合には,零細多数の内航海運業者の無秩序な建造競争を誘発し,再び深刻な船腹過剰状態を招来するおそれがあるものと考えられた。従って,長期的にみれぱ,今後の日本経済の発展に伴う輸送需要の増大,内航海運企業の体質改善の達成,内航海運組合の強化による円滑な自主調整制度の確立等によつて,最高限度の設定による船腹規制は,いずれ廃止の方向に進むべきであると考えられるが,今年度においては,なお引き続き最高限度を設定し,船腹量の調整を行なうことが必要であるとされた。この結果,今年度も貨物船および油送船について 〔II−(I)−17表〕のとおり船腹量の最高限度が設定されることとなつたものである。
|