8 内航海運に関する諸問題


(1) 船舶の合理化

  多様化する荷主側の需要に応えるとともに,いつそうの経済性の向上を期するため,近年船舶の合理化の進行は目ざましいものがある。本船から鋼船への移行,船型の大型化については,すでに述べたとおりであるが,ことに船舶の近代化のきめ手と考えられているのは,特殊専用船化および自動化である。
  特殊専用船化については,原油,石炭,自動車,セメント,L.P.G.,薬品等,貨物の特性およびロットに応じた特殊な構造の専用船の建造がすでに相当の進展をみており,これらが特定の航路に専属的に配船され,低廉で安定した輸送サービスを提供している。
  43年3月末現在において, 〔II−(I)−23表〕に示すような専用船が就航しており,今後もますます増加の方向をたどるものと考えられる。

  船舶の自動化としては,ブリッジからの主機関の遠隔操作オート・パイロット,燃料油,冷却水,潤滑油系統の自動化,オート・テンション・ウィンチ,電動スチール・ハッチカバー等であるが,これらは,船舶乗組員を大幅に削減する効果をもち求人難にあえぐ内航海運にとつて,この隘路を打開する一つのきめ手と考えられており,最近建造される船舶にはこれらの装置を備えた船舶が増加している。

(2) 海陸一貫輸送

  コンテナ輸送は,内航では10年前から行なわれているが,本格的なフル・コンテナ船の就航は立ち遅れていた。しかし最近外航海運の分野で脚光を浴びるに応じて,内航海運の分野においても,フル・コンテナ船への関心が高まりつつある。
  コンテナ船によるメリッとしては,荷造包装費の節減,雨天荷役による本鉛稼動率の向上,荷役の機械化による荷役時間および荷役費の節約,輸送中の盗難破損等の防止,集配時間の短縮,保管料の節約,鉄道,自動車との相互連携による海陸一貫輸送の実現,戸口から戸口への輸送等の種々の経済効果,輸送サービスの向上が期待されるが,他面コンテナ回収問題,復荷の不足,陸上,港湾施設の未設備,輸送単位量の不足,コンテナ規格の不統一等フル・コンテナ船の就航を阻む要素もあり,現在は,なお実験段階にある。
  一方,内航コンテナ船の役割は,内航独自の分野にとどまらず,外航コンテナ輸送のフィーダー・サービスとしても注目をあつめている。外航コンテナ船の就航に伴い,外航フル・コンテナ運営会社の近海部門は,すでに,阪神京浜から中京・九州,北海道の各港への航路を中心としたフィーダー・サービスを行なうことを検討している。

(3) 満載吃水線の標示および無線設備の設置

  船舶の安全性の向上を図るため,41年(1966年)国際満載吃水船条約が改正され,条約適用船舶の範囲が拡大されたが,それに対応して,わが国においても,「1966年の満載吃水線に関する国際条約」を批准するとともに,この条約の国内法化と無線設備の設置の義務付けを目的として,43年5月24日船舶安全法の一部改正が行なわれた。
  満載吃水線の標示義務に関する改正は,44年8月1日から適用され,無線設備の設置義務に関する改正は44年10月1日から全面適用されることとなつた。
  以上の改正によつて,新たに義務を課されることとなる内航非旅客船は,42年11月末現在で,満載吃水線については,4,777隻,無線設備については,1,615隻である。満載吃水線の標示は,現在実施中の「船舶の乾げんに関する規則」(42年8月1日施行,44年8月1日完全実施)による乾げんのマークの標示と規制内容,対象船舶の範囲とも実質的に同じものであり,乾げんマークの標示によつて受ける影響は,貨物船で若干の積荷減となるが,油送船については,ほとんど影響はみられないものとされ,若干の積荷減はあつても,船舶の安全の確保の観点からは必要な措置であるので,企業努力によつてカヴァーされるべきであろう。
  無線設備については,今回新たに義務づけられる船舶は,80%程度これらの施設を備え付けており,安全性の観点から残りの船舶についても,できるだけ早くこれらの設備を設置することが望まれる。

(4) その他

  最近,わが国産業の構造変化はきわめて急速であるが,そのうちでも,とくに大手荷主業界にみられる大企業の合併,原油輸入基地制度の導入は内航海運業のあり方に対しても構造変化を要求しつつある。すなわち,大企業の合併によって,従来のような同一貨物の交錯輸送は姿を消すであろうし,また,輸送合理化の要請もいつそう強くなるであろう。また,石油産業を中心とする原油輸入基地制度の一般化によつて,1万トンないし5万トンの油送船が内航鉛として現われるとともに,従来の夏,冬の輸送需要のアンバランスもかなり改善されることであろう。そのような事態にスムーズに応じうるように,内航海運業者はいまから企業の集約合併,海運組合の強化,船舶の合理化等を進めることが必要である。


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