2 経営状況
41年の旅客航路事業の収支状況を主要な95事業者についてみると 〔II−(I)−26表〕のとおりである。41年中の旅客,手小荷物,貨物の輸送実績 〔II−(I)−27表〕は,40年に比較して大幅に減少している。その結果,40年春から改訂が行なわれてきた旅客運賃収入については,若干の増収がみられたが,その他は40年の水準を下回つている。この間にあつて航送車両運賃収入は著しい増加をみせ,全体としては4.7%の増加をみた。
経費についてみると,41年春の船員,陸員人件費の大幅な引き上げや修繕費をはじめとする諸物価の高騰などから,40年に比較して9.9%の経費増となつている。
以上の結果,航送車両運賃収人が目覚しい伸びを示したにもかかわらず,収支率は40年に比較して悪化している。
つぎに収支状況 〔II−(I)−28表〕を業種別にみると,一般航路や観光航路では輸送需要の減少を反映して収支率が悪化しているのに対して,フエリー航路は収支率が著しく向上しており,また,水中翼船航路や通船航路では,多少の改善をみていることがわかる。
42年中の輸送実績についてみると,在来貨客船については手小荷物が若干減少をみせているほかは,行楽期に天候にめぐまれたこと,消費需要が旺盛であつたこともあつて,貨客とも若干伸びをみており,フエリー・ボートについては,41年同様50%に近い伸びを示している。このため,42年度の収支状況は,一般的にかなり改善をみたものと予想される。
旅客航路事業における事業者当りの航路数は,平均1.7航路であり,大部分の事業者は一つの航路に依存している。しかも,その経営形態別構成では個人経営のものが多く,また,会社形態であつてもほとんどが資本金5,000万円未満の中小企業である。そのうえ,瀬戸内海地域など一地域に多数の事業者が競合している例が多い。人件費をはじめとする諸経費の年々の増大,フェリー事業や一部の航路を除く需要の減退,多数事業者の競合といつた事態を,これら零細な事業者が切り抜けていくためには,競合する事業者同志が互いに協調して統合を行ない,かつ,経済社会の変動に対応して航路体系を整理統合し,経営形態を近代化するとともにきびしく経営の合理化を図つて行くことが必要である。事業の統合あるいは経営合理化の動きは各地で徐々にではあるが見受けられるようになつたが,政府としても,42年10月旅客航路事業の経営実態調査を実施し,航路の整理,統合,経営の合理化等について十分指導しうる態勢を整えるべく鋭意検討を加えつつある。
|