4 フェリー事業の現状と問題点
フェリー・ボートは,人や貨物を乗せたまま自動車を輸送するものであるため自動車の行動半径はフェリー・ボートの利用により海を越えて大幅に拡大する。29年からはじまつた巨額の道路投資による道路網の整備と30年代の経済の高度成長とによる自動車交通の発展は,陸上道路に接続した海上道銘としてのフェリー道路の整備をうながし,この結果,38年以降フェリー航路は著しい増加をみた。その後の自動車の増加につぐ増加は,現在も,より頻繁に,より大型にフェリー事業の発展を要請し続けている。
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フェリー航路の航路距離は逐次延伸し,その使用するフェリー・ボートは次第に大型化しつつある。トン数別のフェリー・ボートの隻数は100〜500総トン未満がもつとも多いが,阪神/北九州航路には,5,000総トンのフェリー・ボートが使用されており,また,現在免許申請中のものには6,000総トンのフェリー・ボートを使用する計画のものもある。在来の旅客船では,もつとも大きいものが,3,000総トンであり,フェリーの出現は旅客航路事業に対するイメージを変えさせることとなろう。このように使用する船舶のトン数が比較的大きく,したがつて所要投資額も大きいことから,フェリー事業者の経営形態別構成は,旅客航路事業全体のそれと比較して会社形態のものが多く,また,その資本金別構成をみても,中小企業以上のものが多い。
フェリー航路を航路の性格によつて分類すると,第1に,青森/函館や宇野/高松のように本州,北海道四国,九州を結ぶ幹線航路,第2に,金谷/久里浜や三角/島原のように湾の入口などの2地点間を結ぶ短絡航路第3に,尾道/向島や高松/小豆島のように本土と離島間を結ぶ離島航路などに分けられるが,最近においては,陸上の幹線道路に並行し,阪神/北九州452kmを連絡する長距離航路の出現を見るに至つた。この第4の形態ともいうべき長距離幹線航路の出現により,フェリー事業は,従来の橋と同様の役割のほかに陸上道路と並行する文字どおり「働く海上道路」として輸送革新の一翼を担う新たな段階に入りつつある。すでに川崎/北九州,東京/神戸をはじめ長距離ルートの申請があいついでおり,43年夏より運航を開始した阪神/北九州航路の成果は,このようなフェリー事業の将来を判断するうえから注目に値しよう。しかしながら,このような長距離フェリーについては,他の輸送手段と競合するため,この優劣を充分検討し,ルート,船型,ひん度等を慎重に選定すべきであろう。競合する他の輸送手段の第1は,陸上の幹線道路である。この場合比較の対象としては在来の国道のみならず幹線自動車道の整備をも念頭において考慮すべきであろう。いずれにしても道路との比較の場合は,トラックでいえば運転手の節約,乗用車でいえば運転時間の短縮というフェリー・ボートのもつメリットがどのように評価されるかが大きな鍵となることと思われる。その第2は,鉄道におけるコンテナリゼーション等物資別適合輸送の推進とピギー・バックの動向である。これによる自動車貨物の鉄道貨物への転移率や自動車そのもののレールでの輸送量の推定はきわめて難しいが,この場合フェリー・ボートは所要時間と経費の点でどこまで鉄道に対抗できるかが問題である。第3は,内航海運におけるコンテナリゼーションの動向である。現状においては,コンテナ化によるコスト低減の程度やその利便性について判断する資料はないが,これとフェリーとの優劣については,港湾施設の問題も含み,なお,検討が必要であろう。
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