第2節 外航の船員需給


  外航海運における船員需給の状況をわが国の遠洋船の約8割をかかえている外航2団体(外航オペレーター19社が構成する外航労務協会および外航オーナ48社が構成する外航中小船主労務協会をいう。)の動きを中心にしてみると,次のとおりである。
  まず,外航2団体の船舶数および鉛員数の動きは 〔II−(II)−4表〕および 〔II−(II)−5表〕のとおりであり,船舶数,船員数ともに増加を続けている。しかし船舶数と船員数の両者の伸びを41年と42年とお対比してみると,船舶数では42年の伸びが大きく,船員数では42年の伸びが小さいことが目につく。これは41年に労働協約が外航船と内航船の別に締結されたため,外航中心の企業は,内航船を内航中心の企業に手離し,船員に余裕を生じていたので42年の船員需要の一部は,その余裕船員の配乗により充足するとともに乗組員数の合理化により,充足したためによるものである。このことは,外航2団体の予備員率が40年28.1%,41年28,5%,42年27.7%と変化し,平均乗組員数も40年37.4人,41年37.9人,42年36.9人と変化していることからもわかる。

  外航2団体について,船員の採用および退職状況を 〔II−(II)−6表〕でみると,船員の採用実績は,退職数を上回り,職員については約2倍,部員については約1.6倍の採用が続いていることが目につく。これは,船舶増による需要が大きかつたことを示している。

  一方,外航船員の供給源は 〔II−(II)−3表〕からも明らかなように,内航および漁業に比べて新規学卒者が圧倒的に多い。
  また,経験船員からの採用社中7割近くが,外航からの採用であるので,外航全体を一つとしてみた場合は船員需要の約80%が,新規学卒者によつて充足されている。船舶職員についてみると,商船大学,商船高校の卒業者中海上就職者のすべてと,水産関係学校の卒業者中,甲種船舶職員資格を有する者の約7割が外航2団体に所属する船会社に採用されている現況である。
  現在,外航船腹の拡充は,42年3月策定の経済社会発展計画に基づき,海運収支の赤字幅を縮少し国際収支の改善を図るため,4年間に約900万総トンの建造を目標に進められている。しかし,わが国の経済の実勢は,この計画目標を超えた経済成長および貿易量の増大を続けており,国際収支の改善を図るためには,より大量の外航船腹の拡充が必要となつている。これに伴ないこれまで以上の隻数増による船員需要の増加および船員増に伴う離職者補充需要の増加が予測され,主として特定の学校卒業者に供給源を依存している外航船舶の職員確保については,2,3年後には困難となる見通しである。
  これが対策としては,41年7月16日海技審議会から運輸,文部両大臣に答申,建議された商船高等専門学校の学生定員の300名増の早期実現のほか,船員教育施設の充実,鉛員職業安定機能の強化等が是非必要である。
  なお,技術革新の導入による船舶の近代化に対応して,海技制度の合理化を検討中であるが,船舶の安全運航を担保しつつ省力化を図ることは,今後の労働力不足の深刻化が予測されることからも望ましいと考えられる。


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