第4節 水産業の船員需給


  最近の漁船数の動きは, 〔II−(II)−1表〕のとおり,ほぼ横這いの状況にある。従つて,水産業の船員需要は,離職者の補充を目的とするものが主体である。
  漁業には,種々の形態があり,それぞれの船員需給事情も異なるが,便宜上平均航海日数を基準に「遠洋」(まぐろはえなわ,トロール等)「近海」(以西底びき等),「沿岸」(まき網,さんま棒受等)の三つに分類し,船員の離職率をみたものが 〔II−(II)−7表〕である。

  これをみると,(1)離職率は「沿岸」が低いこと,(2)41年の離職率が前年より高くなつていることが目につくが,いずれにしても水産業においては,内航と同様船員の流動が激しい。
  船員の離職率が高いのは,内航と同様予備員制度が普及していないこと,また,漁期等の関係から,季節雇用,航海雇用(遠洋に多い)等の雇用形態をとるものが多いことに起因している。
  また,特に漁船の経験船員の採用割合が高いのは,漁船員については漁撈経験が重視されること,季節雇用,航海雇用からの一時的転職者の復帰が多いこと(同一漁種に復帰する例が多い。)による。
  ところで,水産業の船員採用は,漁撈長を中心とした縁故による採用が8割前後を占めているため,船員需給のバランス状況を船員職業紹介状況の求人充足率のみから判断することは,多少問題があるが,漁船の充足率は汽船,帆船のそれより高く,現在のところ水産業における船員需給は内航に比べると安定しているとみることができる。しかし,漁業就業者の年令別構成をみると20〜29才の年令層の占める割合が年々低下し,41年には約21%(陸上産業33〜39%,汽船35%,機帆船11%)となり,労働力構成が老令化しつつあることおよび,漁船における船舶職員法違反事件の漸増傾向からみて,船舶職員の確保が困難となりつつあることがうかがわれる。
  従つて,今後水産業としては,若年層の求職開拓を急ぐとともに,船舶職員への再教育にたえる能力をもつた船員の確保に努力する必要があるが,その前提として,漁業の厳しい労働実態に見合つた労働条件および労働環境の改善が必要である。なお,運輸省としては,漁船の労働条件の改善指導を重点的に行なつていることは,第3章第4節に述べるとおりであり,雇用関係についても可能な限り継続化するよう指導している。


表紙へ戻る 目次へ戻る