1 定員


(1) 商船

  昭和40年以降,商船においては乗組員数が 〔II−(II)−13表〕のように年々減少している。

  職員については,法定定員の制約があるため全体的には減員数も僅かであつたが,部員については,42年は40年に比べ,外航船では1名(約4%)ないし2.5名(約9%)減員となり,内航船では0.2名(約1%)ないし2名(約10%)の減員となつている。なお,保有1,000G/T未満の一杯船主の多い内航小型鋼船の乗組員数は,42年4月現在500G/T以下で5.5名,500〜700G/Tで11・7名,700〜1,000G/Tで14.3名とかなり低い。これは700総トン以下の船舶では部員については法による定員規制がないこと,労働協約に基づく定員規制もあまり行なわれていないことによるものと思われる。
  定員は,船舶の物的施設と相まつて,船舶,人命,財貨の安全に欠くことのできないものであり,かつ労働基準を維持改善するための基本的条件である。内航海運にあつては,大型化,高速化によるコスト低減には外航海運とは異なつた制約があつて,その生産性の伸びもさほどではない。むしろ賃上げその他船員費の増加は,コスト・プッシュにつながる傾向の強い産業であるため,年々の賃金上昇を定員減少でカバーし,船員費全体の増大を極力押えようとする傾向である。
  船舶の自動化,船務の合理化によつて,船内作業の減少がはかられる場合には,定員基準を従前どおり維持する必要性はないが,単なるコスト低減をはかるための定員減少であるとすれば,そのような定員減少は船舶の安全をおびやかし,労働力の磨耗,所要船員の充足難となつて企業の存立にひびくことになろう。

(2) 漁船

  魚貝類の採捕を目的とする漁船では,商船と異り,運航要員に加え漁撈要員を,乗り組ませる。漁船における定員は生産性の向上と賃金配分にかかわる問題としてあらわれるが,賃金についてみてきた漁種における定員は 〔II−(II)−14表〕のとおりである。

  これによれば,40年と41年では定員に大した変化は見られない。漁船の定員が商船より多くなることは当然であるが,このため船員の1人当りの設備は商船よりも劣つたものとなり,災害多発の原因ともなつている。商船に浸透しつつある船舶の自動化は,運航要員よりも漁撈要員の数の多い漁船では,漁撈作業について機械集約をはかることが先決であり,その方面における技術開発がすすめられている。現在運輸省,水産庁及び関係労使の間で「漁船省力化問題懇談会」がもたれ漁労作業の機械集約により生ずる諸問題の検討を行なつている。


表紙へ戻る 次へ進む