2 昭和43年度労働協約改定交渉


 (1) 昭和43年3月末をもつて期限満了となる全日本海員組合と外航2船主団体及び内航2船主団体の各労働協約の改定交渉は,昭和42年12君27日,労使双方から要求を提出,昭和43年1月17日以来,関係労使の間で交渉が行なわれた。
  組合の要求を要約すると
  @ 賃金……乗船本給を15%引きあげること及び機関部手当を一律1,200円とすることなど。
  A 有休給暇……付加休暇を乗船1か月につき1日と改めること。
  B 年金……年額20万円の終身制として労使拠出制に改めること。
  C 定員……定員基準を新たに設けること。
 であつた。
  外航では前後,22回,内航では,17回の交渉が行なわれたが,年金の問題については,現行の年額10万円,10年有期の「付加年金」制度創設時の経緯もあり,4船主団体共同交渉方式については各船主団体ともに強く反対したこと,年金数理に検討時間を要することなどから,期限内には「継続交渉」の合意が得られればよいという組合の意向もあつて,交渉は他の問題にしぼられた。
  3月31日までの期限内交渉では,3問題とも船主もかなり譲歩をしめしたがまとまるにいたらず,期限切れ後組合は,ストライキ賛否の一般投票に入つた。その後労使の自主交渉において,賃金については42年の妥結内容を一つの目安とする折衝がつづけられ,その結果,乗船本給の10%アップでまず4月11日外航が賃金面で折れ合い,次いで内航も賃金面の折れ合いのメドがつき,付加休暇についても,外航は,3日増(現行6日),内航2日増(現行4日)でまとまり,定員基準については,基準をつくることでは組合が譲歩,労使協議については,船主が譲り,「新造船の定員は労使協議のうえ決定するものとし,協議ととのわないときは船主が決定する。」という妥協が成立したため,4月17日,外航内航ともに新協定に調印して解決した。なお,年金については継続交渉となつた。
  船主側はこの協約改定で,要求事項として,機関長のオープン・ショップ,チェック・オフの廃止,争議協定などを要求していたが,争議協定を除いては徹底した。争議協定は,前年の協定妥結以来協議されていたものであつたが,今次の交渉と併行して行なわれていた協議会で決着を見,労働協約の有効期限にはとらわれない新ルールが成立した。
  この交渉の結果,賃金の上昇は次のとおりであるが,船主は,協約改定に伴なうコストアップを次のように試算している。

 (2) 漁業大手である漁船船主労務協会と全日本海員組合との交渉は,昭42加年12月要求提出,昭和43年3月31日,自主交渉で解決した。漁業大手の労働協約は,漁船独自の内容(生産奨励金など)と,外航部門にフォローする内容(保障本給,諸手当,休暇など)とに分かれるが,漁船固有の内容がまず固まり,あとは外航2団体の交渉をまつということで,期限内解決となつたものである。
 (3) 小型鋼船部門の全内航と海員組合の労働協約改訂は,本年2月要求提出5号31日自主交渉で期限内解決をみた。賃上げ額は乗船本給で11.1%,3,476円となり,賃金総額では11.2%,5,831円の増額となつた。また有給休暇が従来の21労働日から23労働日となつた。
 (4) 旅客船については,2月以来全日本海員組合の各地方支部と船主との間に交渉が行なわれていたが,4月末の期限内に何れも円満に妥結した。賃上げ額は本人本給で4,356円,12.9%であつた。また,私鉄総連系の組合では,2月要求提出,4月円満妥結している。


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