2 計画実施期間中に生じた問題点
(1) 経済計画の変更
昭和30年代から経済の高度成長,重化学工業化等が進展する一方,わが国経済は全面的国際化を通じてのきびしい競争,労働力の本格的不定,都市化の進展という新たな境遇に直面した。このため,政府は中期経済計画に代え,42年3月に経済の効率化を軸として,物価の安定と社会開発を重要政策とする経済社会発展計画を制定した。
港湾整備も本経済計画の政策に沿つて進め,かつ経済全体の効率化に資するよう効率のよい近代的港湾への再編を真剣に検討すべき時期にきた。
(2) 港湾利用量の激増
イ 港湾貨物量の増大
第2次港湾整備5ヵ年計画においては,計画目標としての昭和44年全国港湾取扱貨物量を,10億5,000万トンと推定していた。しかし,わが国の経済の成長は著しく,取扱貨物量もこれを反映して,41年には推定値の8億1,000万トンを大幅に上回る9億4,000万トンに達し,さらに42年には11億1,500万トンにもなる見込みであり,これは44年の計画目標値をもはるかに凌駕するものである。
〔II−(III)−2図〕は,全国港湾取扱貨物量の推移を示したものである。
ロ 入港船舶の大型化
一方,入港船舶についてその推移をみてみると 〔II−(III)−3表〕のとおりである。昭和41年にほ36年に比べて隻数で1.07倍,総トン数で1.76倍と増加しており,隻数のわりに総トン数の増加割合が高く,船舶の大型化をものがたつている。
(3) 港湾施設整備の立遅れ
近年,港湾施設への意欲的な投資が行なわれているにもかかわらず前述の如く著しい勢いで伸びる港湾利用量の増大には追いつけず,以下の各指標にあらわれているように,施設の不足は一層激化する傾向にある。
イ 港湾原単位の低下
港湾施設の充足度を示す港湾原単位(貨物1トンを取扱うための港湾公共資産額)の推移は 〔II−(III)−4表〕に示すとおりで,低下の一途をたどり,昭和41年においては,約1.19円トン(昭和9〜11年価格)にまで低下した。これは,戦前,貨物量にほぼ見合つた投資が行なわれていたと考えられる9〜11年の水準を約40%も下回っているのである。
ロ けい留施設及び荷きばき施設の不足
〔II−(III)−5表〕は,けい留施設の延長の伸びを示しているが,36〜41年の6年間に,けい留施設は実延長で1.39倍の増加を示したが,同期間における貨物量の増加率(1.81倍)をはるかに下回つており,増加する港湾貨物に対し整備が追付けないことを示している。
また,わが国と欧州の代表港における,係留施設1m当りの取扱量を比較してみると 〔II−(III)−6表〕のようにわが国の主要港湾は,欧州の主要港湾に較べて,2〜3倍もの貨物を取扱つており能力をはるかに超えた,過負荷の利用を強いられている。
このような港湾利用量の増大に対する施設供給の不足は,慢性的な滞船現象を引き起している。6大港ではとくにこの傾向が著しく, 〔II−(III)−7表〕に示したように,36年末に極度の滞船現象が生じてから後,徐々に緩和されてきていたが,41年からまた悪化してきており,42年については,入港船舶のうち約1割が平均2日の沖待ちを余儀なくさせられているのが現状である。
(4) 急速に進展する流通の合理化
近年のすさまじい流通合理化の波は港湾にも以下のような影響を与え,それに十分応じ得る港湾の近代化を図ることが必要となつた。
イ コンテナ輸送の本格化
世界的規模で急速に進展するコンテナ輸送と,それに対処した外貿埠頭公団の設立に関連し,外貿定期船港整備計画を全面的に修正する必要が生じてきた。
ロ 専用船化
近年,内航海運におけるセメント,石灰石,自動車等の専用船の増加は著しく,昭和42年度末において専用船保有量は約730隻51万総トンに達し,39年に比べ,隻数で約2.2倍,総トン数で約1.3倍という急激な増加ぶりで,これに対応した物資別専門ふ頭の整備の要請が強まつてきている。
ハ 船舶の超大型化
船型の大型化について砥前述したが,特に外航専用船においては,専用化と共に、大量輸送によるコストの逓減を図るための超大型化の傾向が著しい。オイルタンカーは近く27.6万トン,オアーキャリアーも12.5万トン級の船舶が就航する予定であり,10万トン船舶を対象とした第2次5カ年計画を抜本的に改訂する必要が生じてきた。
ニ 荷役の機械化
この他,ユニットロードシステムの導入,港湾労働の需給の逼迫に対処して荷役の機械化を図る等,ふ頭の近代化が必要となつてきた。
(5) 社会開発の面からの要請
イ 大都市への人口,産業の集中
近時の大都市への人口,産業の集中に対処し,過密なき集中政策の一環として,大都市圏の諸港湾を広域的立場からみて整備を進める必要が生じている。
ロ 地域開発
地域格差是正のため,地域開発の中核としての港湾の開発を積極的に推進する必要がある。
ハ 安全の確保
船舶の大型化,船舶交通量の激増,危険物輸送量の増大に対処し,航路,泊地の整備をはかると共に,危険物取扱施設の集約化をはかり今後激増が予想される事故を未然に防ぎ,港湾隣接地区の人命,財産の安全確保を図る必要がある。
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