1 わが国造船業の現状
(1) 概況
昭和42年度の新造船建造量(竣工量)は,2,521隻833万総トンを記録し,過去最高である41年度と比較して,隻数で26%,総トン数で21%増加した。
このうち国内船は2,225隻336万総トン,輸出船は296隻497万総トンで前年度に比し,それぞれ隻数で31%および10%,総トン数で20%及び21%増加している。
次に42年度の受注量(建造許可ベース)は国内船244隻302万総トン,契約船価2,074億円,輸出船153隻593万総トン,契約船価3,455億円,合計では397隻,895万総トン契約船価5,529億円を記録した。この受注量はこれまでの最高である41年度(495隻,1,153万総トン,7,103億円)に次ぐ史上第2位の記録である。国内船受注量は従来の最高である41年度(233隻,271万総トン,1,826億円)を凌ぐ実績であるが,輸出船受注量は41年度に比し,総トン数で33%減少した。
また最近5ケ年間の年度別建造許可実績の推移は 〔II−(IV)−3図〕にみるとおりである。
つぎに造船業の現状を規模別に概観してみる。
(2) 大手鋼船造船業
イ 建造量
42年度の大手鋼船造船業15社(27工場)の建造量(竣工量)は,251隻,732万総トンで,前年度に比べ総トン数で18%の伸びを示した。このうち,国内船は93隻,251万総トン,輸出船は158隻,481万総トンで,従来の最高である前年度に比べ,それぞれ総トン数で,15%及び20%増加している。また大手鋼船造船業の建造量は総トン数でわが国鋼船造船業全体の建造量の88%を占めている。
ロ 受注量
42年度の大手造船業15社(27工場)の新造船受注量(建造許可実績)は215隻,843万総トン(うち国内船76隻,257万総トン,輸出船139隻,586万総トン)で,前年度に比較して,隻数で30%,総トン数で22%減少した。42年度の受注特色を国内船,輸出船別にみると,まず国内船では,計画造船における船型の大型化が顕著で,特に油槽船は41年度の平均船型9万9,000重量トン(最大船型14万7,000重量トン)から16万2,000重量トン(最大船型20万9,000重量トン)に大型化したこと,また海運中核会社からコンテナー専用船各1隻,計6隻を受注したこと,原子力船第1船の建造が許可され,わが国もいよいよ原子力船を建造することになり,世界で第4番目の原子力船保有国となる事が具体化したこと等がある。つぎに輸出船受注の特色をみると,前年度に引き続き超大型油槽船の引合が活発で,ギリシャ系船主,欧米の石油会社,ノルウェー系船主,香港系鉛主等から15万重量トンを超える油槽船を大量に受注したこと,前年度に比べ兼用船の受注量が大幅に増加したこと,また反面1万総トン未満の貨物船の受注量が大幅に減少したこと等がある。また米国船主から世界で初めてのラッシュ式バージ運搬船1隻を受注したことも新しい事柄の三つである。
ハ 新造船手持工事量
大手造船業15社(27工場)の新造船手持工事量は,43年3月末において,国内船56隻,170万総トン,輸出船323隻1,338万総トン,合計379隻,1,508万総トンに達し過去の最高を示した42年12月末に比し,国内船,輸出船ともに総トン数で4%の伸びであり史上最高の記録である。これは従来の工事実績からみて約2年分の工事量である。
(3) 中小造船業
(イ) 中小型鋼船造船業
42年度の中小型鋼船造船業の建造量(竣工ベース)は,2,258隻,101万総トンで,そのうち国内船は2,120隻84万総トン,輸出船は,138隻17万総トンで,41年度の実績と比較すれば総トン数で国内船が38%の増加,輸出船が3.7倍と大幅な増加を示している。新造船受注量(建造許可実績)は,172隻44万総トン(国内船161隻41万総トン,輸出船11隻3万総トン)で前年度に比し,30%減少した。これは輸出船についてみれば1万総トン未満の貨物船受注量が3万4,000総トンと前年度の僅か17%しかなかつたこと,また国内船についても昨年度好調だつた南洋材需要増加による,近海貨物船受注量が本年度は20万総トンで,昨年度に比べ約30%と大幅に下落したためである。
(ロ) 木船造船業
42年度の木船建造量は20総トン以上の大型船で約2万総トンであり,20総トン未満の小型船が約1万総トンと推定されるので,合計で約3万総トンである。
木船造船業は木船の鋼船化及び沿岸漁業の不振等により大幅な需要増加は望めず,最近の建造量の推移からみて今後も3万総トン程度の建造量が予想される。
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