2 輸送状況
(1) 旅客
昭和42年度における日本航空(株)の国際線輸送状況は 〔III−7表〕のとおりである。
まず,飛行距離は,5,792万キロで前年度比29%の増加であつた。これとともに,有効座席キロも67億5,600万席キロと前年度比25%の増加を示したが,これを40年度の40%,41年度の29%と比較すると伸び率は鈍化している。
一方,有償旅客数は,80万4,898人で前年度比25%の増加,また有償旅客人キロは,36億8,000万人キロで同じく25%の増加であつた。有償旅客人キロの対前年度伸び率をみると,40年度は30%,41年度は40%であり,42年度においては相当の鈍化を示している。とくに41年度と比較して伸び率が鈍化したのは,42年度においては近距離国際線の旅客が41年度ほど大幅に伸びなかつたこと,41年度のように他の航空会社のストライキにより旅客需要が日本航空(株)に流れるという特殊事情がなかつたこと等によるものと思われる。
また,座席利用率は,有効座席キロと有償旅客人キロの伸び率が同じであつたため,54%と前年度の比率を維持した。
つぎに,路線別に42年度の輸送状況をみると 〔III−8表〕のとおりである。
まず,太平洋線は,座席キロで前年度比16%,旅客人キロで14%の減少となつている。これは,従来太平洋線として集計されていた東京-ホノルル-サンフランシスコ線の一部がニューヨークまで延長されて,この路線が統計処理上ニューヨーク線として集計されることとなつたためであり,需給が減少したことによるものではない(後述参照)。したがつて,座席利用率は,57.7%と前年度の56.4%より1.3%改善されている。
41年11月から運航が開始されたニューヨーク線は,42年度初めて通年運航されたわけであるが,前年度の週2往復(42年3月のみ7往復)から週7往復へと増便されたこともあつて,座席キロは495%増旅客人キロは556%増と飛躍的に増加し,座席利用率も45.8%から50.5%へと改善された。なお,太平洋線とニューヨーク線を合わせてみると,座席キロで28%,旅客人キロで,27%の増加となつている。
42年3月から運航が開始された大西洋線は,42年度29.3%の低い座席利用率に止どまつた。大西洋線は世界で最も競争の激しい路線であるだけに,座席利用率の向上を図るには格段の努力が必要であろう。
北回り欧州線は,42年度週1往復の増便を行なつて旅客の吸収に努めた結果,座席キロの11%増に対し旅客人キロはそれを上回る22%の増加となつた。このため,座席利用率は53,1%と3年振りに50%台に回復した。
南回り欧州線は,41年10月まで運航された東京-カラチ線が廃止されたため,座席キロ,旅客人キロとも前年度に及ばなかつたが,座席利用率では46.8%と前年度をわずかながら上回つた。
近年観光旅客の増加が著しい東南アジア線については,大幅な増便を行なつた結果,座席キロは32%の増加となつた。しかし,42年度は旅客需要がこれに及ばず,旅客人キロでは26%の増加に止どまつたため,座席利用率は前年度の63.0%から59.9%に低下した。
沖縄線は,座席キロの39%増に対し旅客人キロは45%増加したため,座席利用率は67.2%と前年度の64.4%をさらに上回り,全路線中最高の利用率となつている。これは大阪-沖縄,福岡-沖縄間に強い旅客需要があるためである。
また,韓国線は,わが国と韓国との経済,文化等の諸交流の活発化を反映して旅客需要の増大の傾向が顕著にうかがわれるが,42年度においては新線の開設および増便を行なつてこれに応えた。その結果,座席キロは38%増,旅客人キロは55%増と引き続き順調な伸びを示し,また座席利用率も54.6%から61.2%へと上昇して沖縄線についで高い利用率となつている。
なお,42年4月に開設されたモスクワ線は,ソ連アエロフロートとの共同運航方式により週1往復の運航を行なつているが,42年度は東京発分で60.6%,東京発,モスクワ発全体でも53.6%と高い座席利用率を維持し,順調なすべり出しを示している。
これらの各路線について東京国際空港出入国旅客の動態をみると 〔III−9表〕のとおりである。
42年度における日本航空(株)の積取比率は,日本人51.8%,外国人25.0%で,前年度と比較して日本人は1.8%の低下,外国人は1.5%の上昇となつている。
日本人については,過去5年間において初めて前年度を下回つたが,過去5年間の推移をみると約9%の向上を示している。しかし,諸外国の自国機利用の状況からすると,日本人の自国機利用の程度はまだまだ低く,なお改善の余地があると思われる。
また,外国人についても年々改善されてきてはいるものの,便数比に比べるとまだ相当に低く,今後なおいつそう外国人旅客の吸収に努める必要があろう。
(2) 貨物および郵便
最近の貨物の分野における航空輸送需要の伸びは著しく,将来の展望はまことに明るいものがある。
東京国際空港における出入国貨物の過去5年間の平均伸び率は,30%で旅客の伸び率19%をはるかに上回つている。
このような事情を背景として,日本航空(株)も昭和40年度以来太平洋線において週3往復の貨客混用便を運航するとともに,41年11月から同便を東京-サンフランシスコを直接結ぶ大圏コースによつて運航し,貨物輸送の面における供給力の増強に努めてきたが,42年度においては,前記貨客混用便を3往復増便して週6往復とするとともに,うち3往復は42年10月〜12月の間貨物専用便として運航し,一段と競争力を強化した。
その結果,日本航空(株)の有償貨物トンキロは,'42年度1億4,292万トンキロと前年度比30%の増加となつた。
また,日本航空(株)の積取比率を東京国際空港出入国貨物についてみると, 〔III−10表〕のとおり42年度においては,29.8%と前年度の25.9%に比べ大幅な向上を示している。とくに太平洋線の積取比率の向上には著しいものがあつた。
なお,郵便輸送量は,42年度2,610万トンキロで前年度比9%の増加となつている。
|