3 新海運政策
わが国海運界ではすでに,昭和39年より海運企業の整備計画の実施,利子の支払猶予および利子補給の強化を法制上の3本の柱として,外航船舶の大量建造の推進と海運企業の再建を目的とした再建整備計画が実施され,経済の驚異的な高度成長によつてもたらされた海運輸送需要の拡大を背景に,関係者の努力により大きな成果をおさめほぼ所期の目的が達せられた。しかし,わが国海運企業の国際競争力は外国のそれに比べればまだ弱く,海運関係国際収支改善へのかぎを握る邦船積取比率も,ここ二,三年回復のきざしが見えはじめているとはいえ,船舶建造が貿易物資の輸送需要に追いつかず,いまだ50%を下回つている。このため44年度より新たに貿易物資の安定した輸送の確保と国際収支の改善を図るために49年度までの6カ年についての新海運政策が打ち出された。この新海運政策は,(1)昭和50年度の海運国際収支中運賃収支を均衡させることを目標として,44年度以降6カ年間に2,050万総トンの外航船舶を建造し,そのうち財政資金による計画造船は1,650万総トンを目標とする。(2)財政融資は,船価のうち定期船5%,その他の船舶10%の自己資金の投入を前提とし,残りの部分の70%を融資することとし,利子補給は船主負担金利が国際水準なみの5.65%になるようにする等を主要な内容としている。この新海運政策は,従来の企業助成の方針と異なり,企業の自主性を尊重しつつ,国際競争力のある外航船舶の大量建造を推進することを基本方針としており,企業に対しては,自主的判断による協調体制の強化,財務内容の充実,最高の経営努力を強く求めており,この政策達成のためには諸条件の整備についての政府の適切な施策に加え,企業の積極的な努力が望まれる。
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