1 船舶の輸出


  昭和43年度の輸出船受注量は,171隻,630万総トン,10億8,537万ドルで,前年度に比べて総トン数で6.4%,受注金額で13.1%増加した。これを仕向地別にみるとリベリアが3億9,552万ドルで全体の36%を占めて最も多く,パナマの2億7,357万ドル,イギリスの1億6,369万ドル,ノルウェーの1億4,748万ドルがこれに次いでいる。また輸出船受注量を用途,船型別にみると,全体の55%に当る349万総トンがタンカーであり,このうち9万総トン以上の大型タンカーが27隻,318万総トンと9割以上を占め,42年6月の第2次スエズ閉鎖後の大型船発注ラッシュを反映している。一方,43年の輸出船の通関実績は10億8,415万ドルで前年に比べて10%増加し,総輸出額の8.4%を占めている。この総輸出額中に占める船舶輸出額の割合は,40年に8.9%に達して以来8〜9%台を維持しており,わが国の外貨獲得に大きく貢献している。
  44年3月末のわが国大手造船所27工場の新造船手持工事量は337隻,1,602万総トンに達し,前年同期に比べ総トン数で6%増となつており,またこれは約2年間の工事量に相当する。一方,世界の主要造船国の手持工事量をロイド船級協会の統計によつてみると,スウェーデン489万総トン,63%増,英国436万総トン,78%増,西ドイツ418万総トン,62%増,フランス409万総トン67%増等と手持工事量の伸びの目立つ国が多く,欧州全体でみて,わが国と同様ほぼ2年間程度の工事量を確保している。これは,近年国際造船市場において欧州造船国が巻き返しを図つてきた結果が,最近に至りようやくあらわれたものである。この巻き返し努力と併行して,OECDでは造船作業部会を設けて輸出信用条件および政府助成の国際的な調整につき検討してきた。44年5月末,輸出信用条件(延払条件)を頭金20%以上,返済期間8年以下,金利6%とし,この条件に見合うように各国の公的制度を調整することを骨子とする了解が成立し,造船業に対する政府の助成措置を漸次縮減すべきことが加盟各国に勧告された。
  わが国においては,国内の金融情勢から,輸出船(44年4月1日以後契約のもの)に対する輸出入銀行の貸出し金利を従来の40%から4.75%に引き上げたが,OECDにおける輸出信用条件に関する合意が成立したので44年7月以後各国造船業は同一の信用条件で競争することとなつた。わが国造船業が今後とも輸出産業の一翼をになうためには,機械化,省力化に力点を置いた徹底的な企業の合理化およびコスト低減やコンテナ船等トン当り船価の高い船の受注につながる技術の開発が必要である。
  43年の造船関連工業製品の輸出契約実績は,4,724万ドルに達し,42年に比べて22.7%増加した。造船関連工業製品の輸出は,39年以降順調に増加してきており,43年の実績は39年の約5倍となつている。これは諸外国に対する積極的なPRおよび輸出船搭載品による実績を通じてわが国の技術の優秀性が広く知られたこと,海外に補機,部品等のストツクセンターを置くなどのアフターサービスの向上に負うところが多い。43年の輸出実績を品目別にみると,舶用内燃機関が46%を占めており,また,仕向地別にみると, 〔1−2−13図〕に示すとおり,東南アジア向けが55%で,ヨーロツパ,北アメリカ向けがこれに次いでいる。


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