2 鉄道車両工業
昭和43年度の鉄道車両の生産額は888億円で(改造及び修理を除く),前年度に比べて21.7%増加した。これを需要先別にみると,国鉄向けは前年度の27.2%増,540億円で全体の61%と依然としてその大半を占めている。これに対して民需向けは201億円,輸出向けは147億円でそれぞれ前年度に比べて62.5%増,19.2%減であつた。
43年度の鉄道車両工業は,需要の大宗を占める国鉄が第3次長期計画にしたがい新幹線用車両,通勤通学用電車等を43年10月のダイヤ改正時を目標に大量に発注したこともあつて,これまでの最高の生産額をあげ,活発な1年であつた。民需向けでは,大手私鉄の輸送力増強および大都市における地下鉄の建設に伴う電車の増備と石油化学工業の活況の影響による私有貨車の伸長等により大幅な伸びを示した。
鉄道車両事業は需要の大半を国鉄が占めているため,国鉄からの受注如何が業界に大きな影響を与える。このため過剰設備に悩む鉄道車両メーカーは車両生産部門の近代化をはかる半面,鉄骨橋梁,建設機械等の兼業部門の強化拡充や輸出拡大に努め,国鉄依存の姿から脱皮しようとしている。しかし,輸出については仕向先が慢性的な外貨不足に悩む発展途上国がほとんどである等輸出環境がきびしく,さらに,鉄道車両工業は42年度に資本自主化の50%業種に指定され,今後100%の自由化を控えるなど,鉄道車両工業の健全な発展の途はけわしい。これらの情勢に対処するため,運輸省においては41年度からスタートした第3次機械工業振興臨時措置法に基づき,45年度を目標に企業の合併,品種の専門化等を強力に推進している。日本鉄道車両工業会では,資本自由化対策委員会を設置し,企業の体質改善,業界の体制整備を推進している。
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