6 レクリエーションと輸送
近年におけるわが国経済の高度成長は,生産性上昇を通じて所得の増加,労働時間の短縮,余暇時間の増大をもたらすとともに,一方において人口および産業の都市集中により生活環境の悪化を生じている。これに伴い,レクリエーション需要は,近年年を追つて増大するとともに,その内容も日常の生活環境の過密,喧噪,緊張から解放され,新しい活力を蓄えたいという願いの高まりから余暇の使い方に変化がおこり,旅行・ドライブなど行動的なものにかわつてきている。これらのことは,42年度の「レクリエーションおよび娯楽費」「交通および通信費」がそれぞれ35年度の3.2倍,3.5倍と著増し,可処分所得(2.7倍)あるいは個人消費支出(2.6倍)の伸び率を上回つて伸びていること, 〔2−2−33表〕に示すように,余暇の使い方について受動的な読書,ラジオ,テレビ,新聞は36年から42年にかけて大きく減少したのに比べ,より能動的な旅行・スポーツは顕著な増加を示し,特に旅行はまだ比率が小さいとはいえ10倍もの増加となつていることなどにより容易に理解される。そして,レクリエーションは今日では国民生活のなかで重要な役割と不可欠な効用を有する分野として定着しつつある。
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このような能動的レクリエーションの増大のなかで観光旅行についてみると二,三の特徴的な傾向が見出される。第1は,グループ旅行等小単位の旅行が増加していることである。 〔2−2−34表〕に示すように団体旅行のウエイトは高いとはいえ,36年から42年にかけて減少しているのにひきかえ,家族,友人等と旅行する小単位の旅行が増加してきた。また,個人もしくはグループ旅行でよく使われる国鉄の周遊券の利用客は42年度に600万人をこえ,35年度に比べて約2.5倍となつている。第2は時間距離の短縮運賃距離の相対的短縮による行動圏の拡大とともに観光旅行が広域化の傾向をたどつていることである。地域別観光客数は北海道,東北,九州地方で伸びており,また,東海道新幹線の関通により関東地方の住民の北陸,南紀への観光旅行が増大している。さらに所得水準の向上,国際交流の活発化等によつて 〔2−2−35表〕に示すように日本人の海外観光旅行客が増加して観光旅行の広域化が海外に及んでいる。
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このようにレクリエーションの内容は国民生活の向上充実とともに拡大し,かつ内容がかわりつつあるが,今後経済社会の発展とともに,人々はレクリエーションに従来より大きな効用を見い出し,レクリエーション需要は一層拡大してゆこう。新全国総合開発計画によれば国民総生活時間に占める戸外レクリエーション時間が昭和40年の年間501億人・時から昭和60年の1,015億人・時へと約2倍に拡大する見込みである。このようなレクリエーション需要の増大に対し,大規模海洋性レクリエーション基地の建設,内陸性レクリエーション地区等の整備を行なうとともに,レクリエーションは国民生活をそ生させるものであるという認識のもとに,輸送機関や輸送基礎施設の整備拡充をはかり,良質な輸送サービスが提供されるよう,総合的な見地から輸送対策を樹立する必要がある。
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