3 運賃問題


  近年における国鉄財政の悪化の要因は,運輸収入の伸びに対して、経費の増勢がこれをはるかに上回つたことによるもので,このまま推移すれば,赤字は加速度的に増加し,財政の破たんをきたす危機に直面し,本来の国鉄の使命を達成することが不可能となることは明らかである。
  このような国鉄の現状にかんがみ,今回44年5月10日から旅客運賃料金の改定を実施した。なお,主な改定内容は,次のとおりである。
  第1に,蕨客運賃・料金の等級制度については,従来,2等級制をとつていたが,1等と2等との設備格差の縮少および旅客の需要動向の変化ならびに将来の輸送サービスの改善の方向等を勘案し,従来の1等の旅客運賃,料金制度を廃止し,1本立にすることとした。これに伴い,旧1等車(旧1等船室)を利用する場合には,特別車両(船室)料金を要することとした。
  第2に,基本賃率をおおむね15%引き上げるとともに,第1地帯を100キロ延伸して遠距離逓減の是正 〔I−(I)−23表〕を因るとともに,急行料金寝台料金等の改定を行なつた。
  第3に,乗車券発売業務の機械化,合理化を促進するため普通旅客運賃の距離別区間制を近距離区間にも採用するとともに,中・長距離区間の距離刻みを拡大することとした。

  第4に,手荷物運賃は,現行の均一制を距離別,重量別の運賃制度に改め,小荷物運賃は平均16.8%引き上げた。
  また,定期旅客運賃については,割引率の是正は行なわず,普通旅客運賃の引上げに伴う引上げにとどめた。
  なお,今回は,貨物運賃の改定は行なわず,旅客関係の運賃料金の改定のみを行なつたが,これは国鉄の提供している貨物輸送サービスの状態,他の運輸機関の状況,物価に対する影響等を考慮し,今回は引上げを見送つたものである。
  以上の改定によつて,44年度において総額910億円の増収(改定時期が遅れたことによる減収分を含む。)が確保できることとなり,これをもつて国鉄財政再建のための大きな柱の一つとなることが期待される。


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