3 乗務員に対する保安対策の強化


(1) 運行管理者制度の充実

  自動車運送事業用自動車による交通事故を防止するためには,各自動車運送事業者が内部にお載る運行管理の責任を明確化し,適切な運行管理がなされなければならない。運行管理者制度はこの目的を達成するため「道路運送法」(昭和26年法律第183号)により設けられた制度であり,自動車運送事業者に対し,各営業毎に一定の資格を有するものを運行管理者として選任することを義務付けている。43年9月末現在全国で41,132人の運行管理者がダイヤの編成,点呼の執行,乗務員の指導監督,交通事故原因の究明,交通事故対策の樹立等の運行管理業務に従事している。このような重要な任務と責任を負つている運行管理者がその能力を十分に発揮するには事業者内部における環境の整備が必要であり,事業者自身が運行管理業務の重要性を認識し体制造りをすることが必要条件である。同時に,運行管理者自身の管理能力を高める必要があり,このため,各陸運局ごとに毎年定期的関係法令,事故防止対策につき,研修を実施している。43年3月末現在,全国で運行管理者予定者を含めて68,938人が研修を受けている。運行管理者研修を実施するに当つては,バス,ハイタク,トラックの業態の特殊性や地域の特殊性等を十分考慮した上,研修効果があがるよう努めている。

(2) 適正な運行の確保

  自動車運送事業における交通安全の確保については,行政監督の強化とあわせて事業者自身の交通安全に関する努力が必要である。このため昨年に引き続き,昭和43年12月10旧から44年1月10日までの1カ月間にわたつて「交通安全総点検」を実施した。本年度の重点項目として,飛弾川におけるバス転落事故にかんがみ,異常措置体制の確立等緊急時対策の徹底と定期点検整備の完全励行とをとりあげ,自動車運送事業者の査察,監査,街頭における車両検査等を行なつた。この結果,運動期間中の重大事故発生件数は対前年同期中より10.8%残となつた。
  また,44年5月には東名高速道路が全線供用開始され,本格的なハイウエイ時代を迎え,これに先立つて,6月に運行開始予定の東名高速バス(路線バス)や貸切バス等の輸送の安全確保を図るため,高速運転に必要な知識の修得や実技訓練の徹底等を指示するとともに,事業者講習会や運行管理者研修等を通じて高速道路の運行管理について指導を行なつた。

(3) 自動車運行管理指導センター

  自動車の運行上の事故を防止するため,昭和42年度には東京および大阪市に,43年度には名古屋市および福岡市に社団法人自動車運行管理指導センターが設立され,運転者の適正検査の実施,運転者の適正に関する指導等,安全運転の推進および運行管理の改善に大きな役割を果している。44年度にはさらに広島市に社団法人自動車運行管理指導センターを設立するよう指導を行なつている。なおこれらのセンターの設立に当つては,自動車損害賠償責任再保険特別会計保障勘定から補助金を交付しており,自家用自動車の運転者を含めた広範囲な利用が望まれる。

(4) 自動車運送事業者に対する指導監督

  自動車運送事業用自動車による交通事故は,その大半が運転者の不注意等に起因するものであるから,その背後的原因として自動車運送事業者における運行管理及び事業管理の責任体制の欠陥を看過することはできない。したがつて,自動車運送事業者の監督については,自動車運送事業等監査規則に基づく定期監査,交通安全総点検運動期間中の事業者査察等を通じて強力に指導している。また,重大事故発生の際は現地調査を行ない事故原因を調査解析するとともに事業者の特別保安監査の実施により運行管理,車両管理等の欠陥を指摘し,必要に応じて厳重な処分を行なつている。


表紙へ戻る 次へ進む