1 世界海運市況
(1) 世界貿易の拡大
昭和43年分世界経済は,断続的に国際通貨不安が生じたにもかかわらず,42年の停滞から脱し,米国,西ドイツ等の景気の回復を軸として主要国経済がいつせいに拡大したため,高い成長を示した。
このため,世界貿易額は, 〔II−(I)−1表〕のとおり42年に比べて11%以上の大幅な伸びを示し,国際海上荷動き量も20億トンを越え,貿易額と同様の増加をみせた。
(2) 世界海運市況
43年の海運市況は,スエズ運河閉鎖の長期化により油送船市況は年間を通じて高水準を維持したが,しかし,スエズ運河依存度の低い不定期船市況は,船腹需給の均衡回復も早く,世界貿易の拡大による海上荷動き増加を背景としながらも,ほかにとくに市況刺戟要因が乏しかつたために,全般的に安定的な水準で推移した。
不定期船市況は,43年に入りスエズ運河閉鎖前をわずかに上回る水準でスタートした。2月にはガルフ/西欧などの穀物成約が活況を呈したが,年初の油送船市況が軟調であつたため,グレーンタンカーの殻物市場進出が顕著となり市場を圧迫した。その後,グレーンタンカーは次第に減少したものの,西欧の豊作,インドの記録的収獲増,ソ連,中国の平年作を上回る作柄によつて穀物成約量は著しく減少し,穀物の海運市場主導力は衰え,市況は軟化した。また,米国の和平提案に伴う4月以降の米軍用船の著減も船腹需給を悪化させ,市況軟化の要因となつた。
しかし,米国大西洋岸ガルフ港湾労働組合の協約改訂交渉難航による労働争議は,ガルフ穀物の運賃市況を刺戟し,ストライキ前後の43年11月,12月のガルフ穀物運賃は年間を通じて最高水準に達した。これらの事情もあつて43年の不定期船市況を英国海運会議所の運賃指数を 〔II−(I)−2表〕でみると,41年,42年年間平均は,それぞれ113.5,120.5であつたが,43年年間平均は123.8であつた。
油送船市況は,42年の12月から43年2月にかけて軟化したが,3〜4月には大手石油数社の用船出動によりやや引締りを示した後,5月には大手石油会社の一斉大量用船に刺戟されて市況は急騰し,ペルシャ湾/英欧でインタースケール・レート(1962年にロンドンのインタースケール協会から発表された油送船の基準運賃率)プラス52.5,ペルシャ湾/日本でプラス67.5を最高とする高値成約があい次いだ。船腹手当一巡に伴い5月末には,フラット水準にまで反落したが,6月半ばに至り,さらに、大手石油会社の船腹手当によつて再び高騰し,最高成約は,ペルシャ湾/英欧でプラス75と年間を通じての最高水準に達した。以後,夏場に入るにしたがつて市況は軟化に向つたが,なお,フラットからマイナス30の水準を維持,冬場需要期を迎えた43年10月から11月にかけて市況はフラット水準を越え,高値はプラス10以上まで回復したが,12月に入ると船腹過剰気味となりやや軟化の気配を示した。
43年の油送船運賃指数は,年間平均103.8を示しており,42年年平均113.7より低下したが,スエズ運河閉鎖前の41年分年間平均61.9と比べるとかなりの高水準を維持した。
定期用船市況は,スエズ運河閉鎖による英欧船主の船腹需要の継続と日本の旺盛な用船需要などによつて42年に引き続き活況を呈し,用船料は堅調を維持した。
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