3 内航海運企業の現状


(1) 許可制の進捗状況

  内航海運対策要綱に基づき,内航海運企業の適正規模化を図るため,41年12月に内航海運業法の一部改正が行なわれ,従来の登録制が許可制に改められ,許可基準として内航運送業者に対して, 〔II-(I)-17表〕のとおり一定の支配船腹量の保有を義務づける等の措置がとられた。

  この許可制は,新規の事業開始については,42年4月から施行され,既存事業については44年9月まで2年6ヵ月の猶予期間を設け,それまでに許可基準に達しうるよう体制を整備することとなつた。
  この切替えを円滑に行なうため,日本内航海運組合総連合会が行なう経営指導および合併協業化指導のため,42年度に引き続き43年度にも国から補助金が支出され,また,上記合併協業化を促進するため,船舶整備公団では43年度には,集約化法人を応募資格とする貨物船代替建造(8,000総トン分,8億円)を行なうなどの助成措置を行なつた。
  この結果,44年3月には既存事業者の許可申請10,293件を全国的に受理し,44年10月までに許可制への移行が行なわれる見込みとなつた。
  内航海運業者数の推移および10月以降の見込みは 〔II-(I)-18表〕のとおりであり,許可制が実施されるにしたがい合併協業化,運送業から貸渡業への転業が徐々に進展し,許可制への完全移行後は,運送業者数は42年3月末の約9,200(兼業者を含む)から約1,200(兼業者を含む)へと減少する見込みである。これにより,運送業者は許可基準に適合した適正な企業規模に再編成されることになり,一方貸渡業者は適正規模化した運送業者との間に安定した長期の用船関係を結ぶこととなり,より健全な経営が確保されるものと考えられる。
  なお,この間に内航運送業の適正規模化を目的として実施された企業集約の態様としては,協業組合135(参加業者2,067)会社設立30(同237)等が主要なものである。

(2) 経営状況

  内航海運企業の経営状況は 〔II-(I)-19表〕に示すとおり一般経済の好況と内航海運諸対策の効果とを反映して改善の方向に向かつていることがわかる。

  すなわち,内航運送業を主力とする代表的企業50社(資本金平均約8,000万円)の1社平均の経営状況をみると,特別損益を含めた純損益では,39年度以降41年度まで欠損または売上高純利益率で0.1%程度のわずかの利益を計上するにとどまつていたが,42年度には1,737万円の利益を計上し売上高純利益率は21%となつた。
  しかし好調に推移した42年度においても過去に累積された赤字を完全に解消するには至らず,1,055万円の赤字が43年度に繰り越された。
  43年度は調査対象を全法人業者に拡大し,ここでは小規模のものを含んだ203社(資本金平均約1,000万円)の1社平均の実績を掲げているため,42年度以前と接続しないが,まず,営業損益においては,営業収益が1億3,300万円であるのに対し,営業費用は1億2,100万円であり,1,200万円の営業利益(売上高営業利益率8.9%)を計上したが,営業外損益および特別損益においては,いずれも費用が収益を上回つたため,当期純利益は96万円(売上高純利益率0.7%)にとどまつた。また,これにより前期繰越損失267万円を解消するには至らず,当期損益合計は平均して171万円の赤字となり,剰余金処分および欠損金処理の結果,平均388万円の損失が次期に繰り越されている。
  以上のべたように,内航海運企業の経営は改善の方向に向かいつつあるが,これを他産業の経営状況と比較すると,なお,相当低水準にある。
  すなわち,内航海運企業は船舶の建造に多額の資金を必要とする設備産業であるのに対し,自己資本比率は7.9%(全産業平均21.4%)と著しく低く,これらの資金をもつぱら借入金に依存しているため,負債比率は1,161%(全産業平均367%)の高率を示している。このため,経営における金利の負担が著しく過大となつており,売上高営業利益率は8.9%,利子支払前における総資本収益率および売上高純利益率は,それぞれ6.78%9.02%と他産業とほぼ均衡がとれているにもかかわらず,利子支払後税引前においては,これらの比率がそれぞれ,1.66%2.20%と低位にあり,内航海運企業の基盤がなおぜい弱であることが示されている。


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