5 船腹量の調整


  内航海運においては,その体質強化を妨げてきた慢性的船腹過剰を克服するため,適正船腹量および最高限度量の制度の運用,代替建造政策等の対策が推進され,国内景気の好調とあいまつて,船腹需給はここ一,二年改善の方向に向つているが,43年度においても一般貨物船についてやや過剰傾向がみられるのを除き船腹需給はさらに改善された。

(1) 内航船腹量の策定

  内航海運業法に基づく44年度以降5カ年の各年度の適正船腹量は昭和44年6月17目に 〔II−(I)−21表〕に示すとおり告示されたが,これによると,内航船腹の需給状態は昨年度に引き続きさらに改善され,貨物船および油送船については,現有船腹量が当年度の適正船腹量とほぼ一致するに至つている。
  なお,今回の適正船腹量の策定の際には,原油の保税運送の用に供する総トン数1万トン以上の油送船(たとえば鹿児島県喜入の原油輸入基地からの原油の国内二次輸送船)および塩の保税運送の用に供する総トン数5,000トン以上の貨物船(たとえば広島県三ツ子島に陸揚げされたメキシコ塩の国内二次輸送船)については,その輸送の特性にかんがみ,適正船腹量策定の必要性に乏しいため,船腹量には算入しないこととし,これに伴い,内航海運業法施行規則の一部改正を行なつた。
  このような船腹需給の改善,あるいは今後の日本経済の発展に伴う輸送需要の増大,産業界からの輸送合理化の要請等を考慮すれば内航船腹量の最高限度は,できるだけ早期に廃止すべきものと考えられるが,事業の許可制への切換え等企業体質の改善対策がいまだその途上にあり,内航海運組合の自主調整に委ねるには時期尚早であることにかんがみ, 〔II−(I)−22表〕のとおり,今年度も貨物船および油送船について最高限度が設定された。
  これによると,昭和44年3月末現在ですでに建造されることが予定されている船舶を含んだ現有船腹量に対し,最高限度量が,貨物船で11万総トン(昨年は5万9,000総トン)油送船で9万3,000総トン(昨年は5万5,000総トン)上回ることとなつた。

(2) 船腹調整の実施状況

  内航船腹量の最高限度の設定下においては,最高限度量と現有船腹量の間の余裕量分については,解撤等の引当なしに船舶を建造できることとなるが,建造者相互間に不公平を生じないようにするため,43年以降においては,日本内航海運組合総連合会が,内航船腹の調整と建造引当船の適正価格による供給を目的として,42年12月運輸大臣の認可をえて,新たに船腹調整規程を設定し,船腹調整事業を実施している。44年3月までの間に,同総連合会が,建改造を承認した船腹量は,貨物船558隻18万2,000総トン,油送船370隻13万4,000総トン計958隻31万6,000総トンで,これに伴い,解撤等を行なわせた船腹量は,貨物船1,042隻11万7,000総トン,油送船274隻6万5,000総トン,計1,316隻18万1,000総トンとなつている。

(3) 船舶整備公団による代替建造等

  適正船腹量および最高限度量の制度の運用による船腹量の調整と並行して船舶整備公団においても過剰船腹の処理を図りつつ船舶の近代化を促進するため代替建造が進められてきた。すなわち41年5月に閣議決定された内航海運対策要綱に基づく代替建造3カ年計画においては,42年5月までに27万3,000総トンの老朽貨物船等が一挙に解撤または輸出されたのに対し,41年度から43年度までの3カ年間に,内航船17万9,000総トン,近海船1万5,000総トン,計19万4,000総トン(41年度9万1,000総トン,42年度7万5,000総トン,43年度2万8,000総トン)の船舶の建造が実施され,42,43年度建造船に対しては,事業継続資金として解撤融資が行なわれた。


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