3 漁船船員の概況


(1) 賃金体系

  漁船船員の賃金体系は,高齢船員のそれと著るしく異なつており,水揚高による歩合給制度がとられているものが大部分であるが,専業漁船の賃金体系を全歩合給,全固定給,固定給と歩合給の併用の別にみると 〔II−(II)−9表〕のとおりである。
  この表では,全歩合給が減つて固定給と歩合給の併用が増えているが,いずれにせよ歩合給制度をとるものが95%以上を占めていることがわかる。

(2) 賃金水準

  漁船船員の賃金は,前述のようにほとんどが歩合給という賃金体系であるため,漁業の種類が異なればもちろん,同一漁業においても地域あるいは月別によつて一定ではない。
  いま,周年操業を行なう代表的な漁業の1人代の船員の全国平均給与月額を示せば次表のとおりである。
  なお,歩合給の各人別の配分は,持代数により定められる。持代数は,1人前の漁労能力を有する者を1人代という基準とし,例えば船長1.5,漁労長2.0,甲板員1.0,見習0.6〜0.9と職別にきめられている。昭和43年に調べた全国の専業漁ろう船の平均持代数はおおよそ1.10〜1.20である。従つて,1人代の賃金額は漁船員の平均給与ではない。
  これによればトロール,以西底曳網,1そうびき沖合底曳網,1そうまきあぐり巾着網の各漁業が前年と比べ9,2〜11.4%と安定した伸びを示しているのに対し,昭和41年に大幅に伸びたまぐろはえなわ及びその他のまき網漁業は,前年度と比べ前者が横ばい後者はわずか6.0%の上昇にとどまつている。
  歩合給を中心とした賃金体系であるため漁船船員に特別給与を支給する例は少ない。前掲の6漁種について月平均額をみると最高がトロール漁業の3,741円,最低がまぐろはえなわ漁業の566円であり商船と比較するとかなり劣る。またこの二,三年の傾向をみても平均した伸びをしていない。


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