4 海難防止活動


  海難による犠牲をできるだけ少なくするためには,海難救助に万全を期することはもちろんであるが,それにもまして海難を未然に防止することが必要であり,海上保安庁は航路標識や水路図誌等の整備,海上交通関係法令の整備励行に努めているほか,以下に述べるような海難防止活動を実施し,海難発生の防止に努めている。

(1) 海難防止強調運動の実施

  海難の態様に応じた適切な海難防止活動を重点的・集中的に行なうため,各種海難の発生時期等を勘案して,船舶火災予防強調旬間,旅客船の海難防止強調旬間等年間7種の海難防止強調運動期間を設け,関係官公庁および民間諸団体の協力を得て海難防止に関する広報活動を行なうとともに,海事関係者を中心とした海難防止対策会議を開催し,あるいは合同訓練を実施した。

(2) 短波放送による指導

  沿岸を遠く離れた海域における船舶に対し,海難防止に関する情報を提供するため,43年4月から月間2回,日本短波放送により,「海の安全メモ」と題して海難事例から得られた運航技術に関する事項を中心に,一般的な安全対策の指導,海事関係法令の解説等,時宣に適した放送を行なつている。

(3) 海難防止講習会の開催等

  海難防止思想を高揚し,海事関係法令の周知徹底を図るとともに運航技術の向上に資するため,全国各地において主として小型の一般船舶および漁船の乗組員を対象に海難防止講習会を開催している。43年には日本海難防止協会,海上保安協会と共催したものを含めて930回の講習会を開催し,約62,000人が参加した。また,海難防止運動を広く効果的に実施するため,海難防止を目的とする民間団体の指導育成に努めている。

(4) 気象情報の伝達

  気象情報を早期には握させるため,海上保安庁は全国13か所の通信所から海上予報および警報を放送し,また主要航路筋にあたる21か所の航路標識からは,その付近の気象や海上模様を船舶に通報している。更に,95か所の海上保安部署・信号所・航路標識事務所に気象標識を設置して気象注意報・警報の早期伝達に努めている。
  以上のほか,各地方の実情に応じ適宜海難防止活動を施しているが,43年には特に9月,八戸沖でいか釣漁船が転覆し多数の犠牲者が出たことにかんがみ,当時最盛期を迎えていたいか釣漁船およびさんま漁船に対する海難防止指導期間を設け,過載の防止,積付方法等に重点をおいて臨船指導を実施した。


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