2 空港の整備


(1) 空港整備五箇年計画

  政府は空港を計画的かつ緊急に整備する必要があると認め,昭和42年度を初年度とし,総事業費を1,150億円(新東京国際空港に係るものを除く。)とする空港整備五箇年計画を44年3月閣議決定した。

 イ 空港整備五箇年計画策定の背景

      わが国における空港の整備は 〔III−26図〕に見るごとく実施されており,とりわけ昭和31年空港整備法が施行されて以来空港の整備が進み,現在,57空港が民間航空輸送の用に供されている。しかしながら,これら空港における滑走路,エプロン,航空保安施設等の整備は,民間航空の発展に対して遅れぎみであつて,このため,航空の高速性ならびに定時性の確保が阻害され,また輸送需要に対し,常に供給力の不足を招来してきた。
      この間,41年には航空機事故があいついで起り,航空における安全対策を総合的,かつ強力に推進する必要性が再認識され,特に空港については滑走路の延長,航空保安施設の整備等安全対策を強化するとともに,将来の航空輸送需要の増加と機材の大型化,高速化に対処して所要の各施設を急速に整備することが強く要請された。かかる情勢に鑑み運輸省は空港整備五箇年計画を策定することとなり,42年3月閣議了解を得た。その後,国際および国内の航空輸送需要の増大はさらに進行し,これに対処して航空機の大型化傾向が激化したので,これに対処するため,空港種別の整備計画をとりまとめのうえ,44年3月25日閣議決定を得た。

 ロ 空港整備事業の実施の目標および事業費

      空港整備五箇年計画における空港整備事業の実施の目標および事業費はつぎのとおりである。

 (イ) 空港整備事業の実施の目標

      ○国際空港
      東京国際空港および大阪国際空港について,滑走路を3,000メートル級に整備するとともに,エプロン,航空保安施設等を整備する。
      ○地方空港
      地方空港のうち緊急を要するものについて,原則として滑走路を2,000メートル級または1,500メートル級に整備するとともに,エプロン,航空保安施設等を整備する。

 (ロ) 空港整備事業の事業費

 ハ 空港整備五箇年計画の内容

      空港整備五箇年計画の主たる内容はつぎのとおりである。
      ○国際空港(第一種空港)
      東京国際空港
      現在1,570メートルのB滑走路を2,500メートルに延長するとともにA滑走路沿いにエプロン35バースを増設する。さらに,ジャンボージェット機の就航に備えて現在のCIQ(税関,出入国管理,検疫)施設を拡充整備するほか,既設エプロンの改修を行なう。B滑走路延長に伴つて,計器着陸装置を設置する等航空保安施設の整備を図る。ターミナル管制の自動化を図る。
      大阪国際空港
      既設の1,828メートルの滑走路に平行に3,000メートルの滑走路を新設するとともに,32バースのエプロン,ターミナルビルの新設をはじめとしてターミナル地区を全面的に改修整備する。計器着陸装置,レーダー,進入灯等の航空保安施設の整備を図る。
      〇地方空港
      第一種空港
      函館,仙台,新潟,広島,松山,熊本,大分,宮崎,鹿児島等の空港について,滑走路を2,000メートル級に延長するほか,エプロン等のターミナル施設および計器着陸装置,レーダー等の航空保安施設を整備する。このうち,熊本,大分,鹿児島の3空港については現在の空港が拡張困難であるため空港を他の場所に移設し整備する。
      第三種空港
      青森,秋田,八丈島,出雲,種子島等の空港について,滑走路を1,500メートルに延長する。また他の空港についてもYS-11型機の就航に伴い滑走路,エプロン等の改修を行なう。また,大多数の空港について進入角指示灯等の航空灯火を設置する。
      共用飛行場
      昭和47年札幌で開催される冬期オリンピック対策の一環として,長距離国際線の受け入れを可能とするため,千歳飛行場の滑走路を2,700メートルから3,000メートルに延長するほか,エプロン等の整備を行なう。また,丘珠飛行場の着陸帯整備,小松飛行場の平行誘導路整備,板付飛行場のエプロン,駐車場の整備等を行なう。
      騒音対策等
      公共用飛行場における航空機騒音による障害の防止等に関する法律により,東京国際空港および大阪国際空港周辺における学校,病院等の騒音防止工事等に対する助成,学習,集会等のための共同利用施設の整備に対する助成等を行なう。
      その他空港整備計画を策定するために必要な調査を行なう。

 ニ 空港整備五箇年計画の進捗状況

      年度別空港整備事業費(新東京国際空港に係るものを除く。)の推移は 〔III−26図〕に示すとおりであつて,42年度83億円,43年度89億円の事業が実施され,44年度は117億円の事業費が予定されている。

(2) 昭和43年度の整備状況および昭和44年度の整備計画

 イ 第一種空港

      東京国際空港については42年度よりB滑走路の延長,エプロンの整備などの事業を実施しており,44年度は引き続きこれら事業を継続実施するとともにターミナルビルの整備等を行なう。
      大阪国際空港については45年に大阪で開催される日本万国博覧会までに,その主要部分を完成させることを目途に3,000メートルの新滑走路,エプロン,ターミナルビル,駐車場の新設を中心とする事業を実施しており,このうちターミナルビルについては44年1月供用を開始した。

 ロ 第二種空港

      43年度は函館,仙台,新潟,広島,松山,熊本,大分,宮崎の各空港について滑走路を2,000メートル級に延長する事業を実施するとともに高松空港のレーダー等を整備した。
      44年度は前記各空港の滑走路延長工事を継続実施するほか,新たに鹿児島空港の滑走路を2,500メートルに延長する等の事業を行なう。以上のうち,鹿児島空港については,特定国有財産整備特別会計により,空港を移設して整備し,46年度末までに完成させる計画である。さらに,高知空港についてはエプロン増設等を行なう。

 ハ 第三種空港

      43年度は秋田空港の滑走路を1,500メートルに延長する工事が完了したほか,八丈島,出雲両空港の滑走路を1,500メートルに延長する工事を実施した。44年度は青森,八丈島,出雲,種子島の各空港において滑走路を1,500メートルに延長する工事を実施する。このうち出雲空港の滑走路延長工事は44年度に完成させる計画である。以上のほか,秋田,南紀白浜両空港において照明施設の整備等を行なう。

 ニ 共用飛行場

      43年度は丘珠飛行場の着陸帯整備,板付飛行場の庁舎,千歳,小松飛行場の平行誘導路の整備等の事業を継続実施し,このうち,板付飛行場の庁舎が完成した。44年度は前年度に引き続き丘珠飛行場の着陸帯整備等を実施するほか,千歳飛行場の滑走路を3,000メートルに延長する工事,板付飛行場のエプロン,駐車場の整備等を行なう。このほか,小松飛行場の照明工事を実施する計画であり,これにより40年度より実施してきた平行誘導路整備が完了する。


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