3 新全国総合開発計画における観光開発


  昭和44年5月30日に閣議決定された新全国総合開発計画は,今後20年間のわが国の地域開発の政策課題を,「豊かさを目ざして革新を続ける社会では,物質的な豊かさにまして,社会的生活的な豊かさが求められ,個人に対しては自立的人間形成が要求される。同時に,生活においては余暇時間が増大し,余暇が生活の重要な目標になる。このような新しい生活中心の価値観に対応するよりよい社会環境の形成を図る必要がある。」とし,そのための開発手段は,新交通通信ネットワークの形成を中心とし,これと関連しながら,観光,工業,農林水産業等の大規模産業開発プロジェクトを実施することにあるとしている。
  この産業開発プロジェクトの一環としての観光レクリエーションの主要計画課題については,国民総生活時間に占める戸外レクリエーション時間が,昭和40年の年間501億人時により,昭和60年の1,015億人時へと約2倍に増大するなかで,消費水準の向上,機動性の増大も伴つて,レクリエーション需要は大幅に増大し,その形態も大きな空間を必要とするレクリエーション活動の比重が高まる。
  このような傾向に対処して,水泳,ヨット,モーターボート等の海洋性レクリエーション需要に対しては,昭和60年に全国で必要とする海岸線延長1,000kmを整備するとともに,約10kmに及ぶ人工海岸の造成を中心とする大規模海洋性レクリエーション基地を数カ所建設する。また,登山,ハイキング,スキー等の内陸性レクリエーション需要に対しては,昭和60年にこれに必要とされる約500万haの自然観光地域のなかに大規模かつ集中的に,水道,電気等の施設利用が可能なキャンプ場,ホテル,ゲレンデ等の施設の完備した自然観光レクリエーション地区約5万haを整備することにしている。
  運輸省では,この計画を実現するため,法制,財政等の諸方策を検討中であるが,先ず,44年度には,九十九里地域を対象として,大規模海洋性レクリエ-ション基地に関する調査を実施することにしている。


表紙へ戻る 目次へ戻る 前へ戻る