情報化社会への進展は,輸送に対する需要を大きく増大させるとともに,輸送需要の多様化,高度化をもたらしている。輸送の側としては,これに対応して,輸送施設の拡充,輸送技術の革新,新輸送システムの導入等を進めることはもちろん必要であるが,それとともに,運輸における情報処理の近代化を図ることがきわめて重要となってきている。
すなわち,多様化,高度化,大量化する輸送需要に即応した輸送サービスの適切な提供,労働力の逼迫による人手不足,賃金等質ストの上昇による企業経営の圧迫,輸送の高速・大量化にともなう安全性の確保など,運輸は解決しなければならない多くの問題に直面しているが,これらの問題に対処するために,運輸業が情報化社会に適応したシステム産業として整備されていく必要がある。その一環として・コンピューターの導入を中心とした情報処理の近代化が,運輸業においてもすでに推進されつつある。
コンピューターの導入を中心とした情報処理の近代化は,輸送需要の動向の把握・分析,企業経営の合理化・高度化,輸送の安全の確保などに大きな役割を果すものと考えられ,このような運輸の情報処理の近代化が,わが国の情報化社会への移行,豊かな社会建設の鍵であるともいえよう。
運輸における情報処理の近代化は,コンピューターの導入に限られるものではないが,一つの目安としてコンピューターの導入状況を見ると, 〔2−2−1表〕に示すとおりであり,ここ数年で急速に導入が進んでいることが分る。
コンピューターによる情報処理の特長としては,(ィ)情報の大量・高速処理,蓄積,検索が可能となる,(可通信網とむすびついて多種大量の情報を即時に遠隔処理することができる,などが挙げられ,経営の高度化,広域化に資するところが極めて大きい。
コンピューターの導入を中心とした情報処理システムは,1つの目的のためにつくられるということは稀であり,いくつかの目的を併せもつていることが普通であるが,運輸における情報処理の近代化は,大別して,(イ)企業経営の合理化を目的とするもの,(ロ)運輸サービスの向上を目的とするもの,(ハ)運行の安全を目的とするもの,に分けられよう。
以下,この3つの観点から,運輸における情報処理の近代化の現状をみていくこととする。
第1節 運輸企業の合理化策としての情報処理の近代化
第2節 運輸サービスの向上策としての情報処理の近代化
第3節 運行安全策としての情報処理の近代化
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