1 拡大する輸送量


  44年の世界経済は,世界的なインフレの強まり,国際通貨不安の持続などの問題をはらみながらも,先進諸国の景気の上昇によって,43年に引き続き順調な拡大を示した。
  このような世界経済の拡大を反映して,44年の世界貿易は輸出(FOB建)で2,417億ドルと43年に比べ14%伸長し,貿易量は22億7,000万トン(推定)と9%増大した。
  また,44年の世界の国際旅客流動量は,欧州地域における政情が安定し,同地域を中心とする国際旅客流動が旺盛となつたこと,世界の経済活動が活発であつたことなどにより,1億5,300万人に達し,その前年比伸び率は8.5%と,伸び悩みを示した43年の1.4%を大きく上回つた。
  44年の世界の貿易,国際旅客流動の拡大のなかにあつて,わが国を中心とする貿易量,国際旅客流動量も,わが国経済の高度成長,国民の所得水準の向上などを反映して,大幅に拡大し,その世界に占める地位はいつそう高まつた。
  44年のわが国の貿易量は,輸出3,683万トン,輸入3億8,773万トン,計4億2,456万トンに達し,43年に比べ,それぞれ21.1%,17.3%,17.7%の増加を示した。とくに,44年のわが国の輸入量は,世界の貿易量の17.2%を占めるにいたり,わが国は42年に15.0%を占め米国を抜いて世界最大の輸入貨物の荷主国になって以来,43年の15.8%から,さらにその比重を高めた。
  わが国の貿易量の伸びを経済成長との関係でみると, 〔1−2−2図〕のとおり,40〜44年の5年間の年平均実質経済成長率11.2%に対して,輸出量の年平均増加率は15・9%輸入量の年平均増加率は17.4%で,経済成長に対する貿易量の弾性値は,輸出1.47,輸入1.61となつている。すなわち,この5年間に,輸出量は経済成長率の1.5倍,輸入量は1.6倍の年増加率で増大してきたわけである。
  さらに43,44年についてみると,わが国経済が高度成長下に,輸入の増勢を上回る輸出の好調によって,国際収支の大幅黒字を記録するという経済体質に転換したことを反映して,輸出入量とも経済成長率を上回つて大きく増加している。このことは,今後,わが国経済の伸長にともなって,従来と異なり,輸出入量が並行して増大していくであろうことを示している。

  44年のわが国を中心とする国際旅客流動量は,入国者総数が135万人,出国者総数が134万人に達し,43年に比べてそれぞれ26.3%,24.9%の増加となつた。
  入国旅客数の世界の国際旅客流動量に占める割合は,42年の0.65%,43年の0.76%から44年には0.88%へと向上し,わが国は国際旅客流動の面においても,その比重を高めてきている。
  44年の来訪外客数は,わが国経済の国際化を反映して,60万9,000人と43年より17.3%の大幅な増加を示した。また,出国日本人数は,国民の所得水準の向上にともなつて年々増加し,44年は71万2,000人と43年に比べ31.4%増と大幅に増大した。


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