4 新時代を迎える日本/欧州間の輸送体制
米国に保護貿易の動きが高まりを見せたり,東南アジア諸国中に外貨事情の悪化等を理由に輸入制限措置をとる国がでている情勢のなかで,経済構造のなかに輸出向け生産がビルト・インされるにいたつたわが国にとって,輸出市場の多角化が輸出の安定的伸長をはかっていくうえで大きな課題となつてきた。
この意味において,44年をとおし,西欧向け輸出がめざましく伸び,EEC諸国の経済が息の長い拡大基調を継続しているため,今後も対欧輸出は大きく伸び続けるものと予測され,欧州の輸出市場としての重要性が非常に高まつている。
日本と欧州間の貿易は,日本/米国間,日本/東南アジア間の貿易に比較し,輸送距離が非常に長いため輸送時間が長く,かつ輸送コストも割高となるため,輸送問題が対欧貿易の発展に大きな鍵であるといえよう。
45年3月,モスクワ経由欧州線の航空便の運航が開始され,従来の北廻り欧州線に比較し,日欧間は2時間以上の時間短縮となつた。かくして,日本と欧州間の交流が加速化される基盤が築かれることとなつた。
一方,46年には,日本/欧州航路に26ノツト,1,850個積のわが国の高速コンテナ船5隻が就航する予定となっている。同じ頃,英国,西独,フランス,オランダ,スカンジナビア諸国のコンテナ船19隻も欧州航路に投入される予定である。日本/欧州間は,在来型船舶では荷役時間を含めて片道約60日かかつたものが,コンテナ船では,約30日に短縮されることになる。このような輸送革新は,日本/欧州間の貿易を大きく促進させるであろう。
日本と欧州を結ぶ新方式として,北米ランドブリツジ方式とシベリア・ランドブリツジ方式が研究されている。米国大陸横断鉄道によつて太平洋と太西洋を結び,日本と欧州を結ぶ構想が北米ランドブリツジ方式であり,シベリア横断鉄道によつて日本と欧州を結ぶ構想がシベリア・ランドブリツジ方式である。この両構想とも海陸輸送を有機的に結合して行なう雄大なスケールのものであるが,なお,実現には技術的に検討を要する事項が多い。
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