1 旅客輸送サービスにおける予約システム
(1) 鉄道
旅客輸送における座席予約システムのなかで,現在もつとも成果を挙げているのは国鉄のみどりの窓口である。これまで,座席予約業務は人手による予約台帳の集中管理方式がとられていたが,近年の旅客の急増,複線化・電化などによる輸送力の増強とあいまつて,その取扱量は急増したため,国鉄では座席予約業務のコンピューター化を検討し,オンライン・リアルタイム(遠隔即時処理)方式のマルス(MARS-Magnetic Electronic Automatic Seat Reservation System)を開発した。
マルスによる座席予約業務は35年に端局装置12台,収容座席数2,300席で出発したが・これは試験的なものであり,その後39年のマルス101から本格的運用に入り,40年にマルス102,43年にマルス103,45年にはマルス104と増設がすすみ,現在では端局装置1,021台,収容座席数は40万席と大幅に増加し,一部を除いて全てコンピューターにより処理されることとなった 〔2−2−3図〕。このほか,団体専用に予約受付を行ならマルス201が稼動している。
私鉄においても,特急券の発売等を同様のシステムで行なっているところもあらわれてきている。
(2) 航空
日本航空では,オンライン・リアルタイム方式による国内線座席予約システムを39年から開始した。国際線の座席予約については,41年6月に国内営業所からオンライン・リアルタイム方式で,海外支店,外国航空会社からテレタイプによるバッチ処理で開始し,42年2月には国内各地における端末装置を194台に増設して現在の座席予約システムを完成した。
日本航空のこのシステムはジヤルコム(JALCOM)Iとよばれ,国内100カ所,海外62カ所の営業網をオンラインとテレタイプでむすび,1日平均5万件以上もある国内線や国際線の座席予約業務を正確迅速に処理している。
外国の航空会社の進んだところでは,旅客1人1人の名簿を基本としたPNR(Passenger Name Record)方式による新しい座席予約システムを開発している。日本航空においても,新旅客システムを開発中であり,これは45年11月稼動開始予定の座席予約システム(JALCOMII)と45年6月より稼動開始した空港でのチェックイン・システムを含む諸作業を統合したものである。現在ジャルコムIは国内にしか端末を置いていないが,新システムでは高速回線を介して米国,東南アジア各地に端末を設置し,これら各地において日本航空の座席の予約,変更,乗継便の処理等が即座になされることとなる。また,従来国際線のチエック・イン業務は手作業でなされていたが,ジャンボ機のように一度に300〜400人旅客をさばかねばならない事態においては,手作業による処理は不可能に近くなる。コンビューターを導入することにより,業務処理のスピードアップが大幅に促進されることとなり,チェック・イン業務の機械化は大量輸送時代において不可欠のものといえよう。
(3) ホテル,旅館の予約
旅行斡旋業では,鉄道,航空などの座席の予約のみならず,ホテル,旅館の予約もオンライン・リアルタイムで処理しているところが出てきている。
42年4月から業界で最も早くホテル,旅館の予約業務のオンライン・リアルタイム化を図ったK社では,現在,全国のホテル,旅館約800軒,1日当り6,000室を1年分,また,N社では1,900軒,22,000室を1年分記憶させており,客の希望に応じた宿泊地,旅館の紹介を迅速に行なっている。その概要は 〔2−2−6表〕のとおりである。
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