3 中小私鉄対策


  中小私鉄は,地方住民の足として,また地方産業開発のための大量輸送機関として現在なお重要な役割を果しているが,その経営状態は,年々悪化の一途をたどっている。このため,各種補助金の支給,租税の軽減等これまで講じられてきた対策のほかに,今後次のような対策を講じる必要がある。

(1) バス路線網との合理的な輸送分野の調整

  鉄道は輸送密度に対し固定的な経費が多いのに比べ,バスは輸送密度に対し変動的な経費が多い。したがつて中小私鉄とバスの間で,主として輸送コストの面から適切,かつ効率的な輸送分野の調整を進め,無益な競争を排除して行く必要がある。
  すなわち,ある程度以下の輸送密度があり・バスに転換するより輸送コストの低い路線については省力化を中心とする合理化および運賃制度の是正により経営基盤を強化して,鉄道として存続させる。外に,国民経済的な観点からバスに転換すべきであるが,道路事情等によりそれが不可能な路線については欠損補助等の助成措置を講じて,転換を阻んでいる事由が解消するまで存続させる。
  バス輸送の方が低コストとなる輸送密度の極めて小さい路線については,個別的に現地の実情調査を行なったうえで早急にバスに転換する。この場合において,その促進を図るため,バスヘの転換のために必要な資金につき長期低利融資の確保に努めるとともに,廃止基準の弾力化等の措置を講じる必要がある。

(2) 省力化による経営の合理化

  鉄道として存続させるべき路線については,信号の自動化,出札等各種業務の機械化,駅の統廃合,無人化等徹底的な合理化を促進する。このために必要な資金について長期低利融資の確保に努めるとともに,44年度から実施している合理化設備に対する補助(合理化設備投資額の10%相当額)を当面継続し,必要に応じて他の適当な助成措置を検討する。
  また,合理化に対する法制的障害が認められる場合については,所要の改正又は運用を改めることによりその障害の除却に努める。

(3) 運賃制度の是正

  中小私鉄の適正かっ安全な運営の確保を図り,その合理化策を積極的に推進するためには,少なくとも収支償うような運賃制度に是正する必要がある。


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