3 主要海運国の海運助成策


  主要海運国の多くは,それぞれの国の事情を反映して,自国商船隊の強化,国内造船所の保護育成,特定航路の権益維持,国際収支対策,軍事国防政策などの観点から,直接ないし間接の海運助成策を講じている。その概要は 〔II−(I)−4表〕にみられるとおりである。
  最近1年間の各国の海運助成策を概観すると,米国および英国の2国において注目すべき政策の変更がみられる。すなわち,44年10月に発表された米国の新海運政策と44年11月より適用されることとなつた米国の建造補助金交付基準の改訂である。以下その概要を述べる。

(1) 米国の新海運政策

  従来の米国の海運助成策は,定期船に対する建造差額補助ならびに運航補助が中心であつたが,新海運政策は,これまでの助成案をさらに一歩押しすすめるかたちで,助成対象を定期船以外の船種にも拡大し,1980年度までの10年間,毎年30隻の外航船舶の建造を実施せんとするきわめて意欲的なものとなつている(旧建造補助年間約10隻)。
  この新政策の意図するところは,(イ)老朽化した米国商船隊の近代化(米国商船隊の約4分の3が船令20年以上)と米国船による積取比率の大幅向上,(ロ)割高な運航費負担軽減による米国商船隊の対外競争力の強化,(ハ)標準船型の量産による米国造船所の生産性向上などにあり,今後わが国海運にも影響するところ少なくないものと思われる。
  なお,本計画実施にともなう建造差額補助及び運航補助の額は,10年間に約38億ドルに達するものと見込まれており,また,造船水準引上げによる政府保証抵当融資の最高限度額は,現在の10億ドルから30億ドルに引上げられる見込みである。

(2) 英国の建造補助金交付基準の改訂

  英国の建造補助金は,英国籍を有する法人あるいは個人が船舶投資を行なつた場合に交付される制度であつたため,外国の会社が支配するペーパーカンパニーが外国造船所に発注した船舶にも支給されていたが,44年11月より,補助金支出が英国の国際収支に寄与するかどうかという国際収支貢献度基準が適用されることとなつたため,ペーパーカンパニーの船舶建造あるいは,外国造船所への発注が大幅に規制されることとなつた。
  また,この措置に関連して,英国造船所に発注する英国船主に対する低利融資の政府保証限度額が,4億ポンドから6億ポンド(約5,180億円)に増額するよう検討されている。


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