1 概況


  44年のわが国貿易量は増加の一途をたどり輸出3,683万トン(対前年比121.1%),輸入3億8,773万トン(対前年比117.3%),合計4億2,456万トン(対前年比117.7%)となり,初めて4億トン台をこえたことが注目される。その増加の主な要因としては,輸出において鉄鋼,機械,化学製品が大幅に伸び,輸入においては鉄鉱石,石炭,非鉄金属鉱,原油等の原燃料輸入の伸びが著しかつたことがあげられる。
  45年3月末におけるわが国の外航船腹量(3,000総トン以上の鋼船)は,1,233隻2,004万総トンである。このうち,一般貨物船は1,202万総トン(全体の60%)で,44年同期に比べて139万総トン131%の増加となり,タンカーは802万総トン(全体の40%)で,44年同期に比べて104万総トン14.9%の増加となつている。
  44年における邦船および外国用船による輸送量および運賃収入は 〔II−(I)−5表〕に示すとおりであるが,邦船輸送量は輸入大宗貨物である鉱石,石炭および原油等の専用船や油送船の大量建造により前年比19.7%と大幅に増加し,一方,外国用船輸送量は外国用船が43年の月平均537万重量トンから44年の月平均672万重量トンヘと積極的に行なわれたため,26.2%の著増を示してわが国海運の全輸送量の21.7%を示している 〔II−(I)−6表〕

  44年の邦船積取比率は,輸出については輸出量の伸びが前年比,21.1%と著しかつたが,邦船輸送量が鋼材,自動車等の輸送量の増加によつて前年比29.0%とそれを上回つたため38.8%と43年より2.4%改善された。
  また,輸入の積取比率は主として輸入輸送に従事する専用船,油送船等の大量建造によつて40年以降改善を続けており,44年については邦船輸送量が前年比18.4%と大幅に増加したが,輸入量の伸びも前年比17.3%と著増したため,乾貨物の積取比率は39.1%,油送船積貨物の積取比率は59.6%,輸入全体では48.1%とそれぞれ43年に比べて0.2%,0.6%,0.4%の改善にとどまつた。
  一方,外国用船を含めた積取比率は,輸出56.1%,輸入60.8%で43年に比べてそれぞれ1.9%,1.4%改善されたが,これは外航船舶の大量建造とともに外国船を積極的に用船した結果である。
  44年の海運国際収支は 〔II−(I)−7表〕のとおり,受取11億1,700万ドルであったのに対し,支払は20億100万ドルで,差引8億8,400万ドルの赤字となり,43年の8億8,600万ドルの赤字に比べて,わずか200万ドルであるが改善された。

  これを計上項目ごとにみると,貨物運賃は輸出および三国間輸送の受取が7億1,900万ドル,輸入の支払が11億9,100万ドルで,差引4億7,200万ドルの支払超,港湾経費は1億8,100万ドルの支払超,用船料は2億3,800万ドルの支払超となつている。
  海運国際収支が改善されたのは,輸出および三国間運賃の受取が,43年に比べて23.7%増加したのに対し,輸入の支払運賃が4.4%の増加にとどまり,貨物運賃の赤字幅は43年に比べて8,800万ドル減少し,一方,港湾経費等の赤字幅については,43年に比べて,8,600万ドル増加したにとどまつた結果であり,これは外航船舶の大量建造が輸送力の拡充となつてあらわれ,貨物運賃収支の改善に反映されたためと考えられる。


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