2 コンテナ船


  わが国のコンテナ輸送体制は,熾烈な国際競争に打ち勝つべく,政府および民間の協力体制のもとに整備されており,43年8月の加州航路をかわきりに,44年10月に豪州航路さらに45年5月にシアトル・バンクーバー航路が開設され,合計11隻の新造フルコンテナ船が就航している。
  すでに開始以来3年目を迎えた加州航路では,貿易の伸びも著しくさらに比較的付加価値の高い電気製品,自動軍部品等の輸出貨物を中心にコンテナ化率も高く,わが国海運会社の2社グループ(米国マトソン社と提携),4社グルーブともに安定したサービスを行ない,6社全体で44年には輸出91万フレートトン(コンテナ個数4万8,000個),輸入54万フレートトン(コンテナ個数3万8,000個)を輸送し,予想以上の好成績を収めている。しかしながら,43年12月から8隻の改造コンテナ船を投入したシーランド社が,北大西洋航路での実績経験を生かして着実にシエアーの増大を図つているのも見のがせない。
  豪州航路においては,44年10月,川崎汽船,日本郵船,大阪商船三井船舶,山下新日本汽船がコンテナ化を開始した。川崎汽船はオーストラリアの国営会社であるオーストラリアン,ナシヨナル・ラインと提携し,相手国とターミナルの相互利用を行ないながら570個積のロールオン・ロールオフ船2隻(川崎汽船所有は1隻)で月間2航海のサービスを行なつてきたが,さらに45年7月からオーストラリアのフリンダース社を加え,10日間隔のサービスとなつている。また,日本郵船,大阪商船三井船舶,山下新日本汽船がグループになつて,3隻の1,000個積コンテナ船で10日間隔のサービスを行つてきたが45年8月から英国のAJCLグループの2隻とあわせてターミナルの相互利用,配線調整を行ないっつウイークリー・サービスを行なつている。
  また,シアトル・バンクーバー航路においては,邦船6社が3隻のコンテナ船を投入することになつており,すでに45年5月から川崎汽船,ジヤパンライン共有の736個積の第1船が就航している。日本郵船,昭和海運共有の第2船,大阪商船三井船舶,山下新日本汽船共有の第3船の就航はそれぞれ9月,10月に予定されている。
  現在,わが国ではすでにフルコンテナ船サービスが開始された3航路以外の定期航路においても,在来定期船を利用したコンテナ輸送が一部行なわれている。これは海運会社にとっては必ずしも有利であるとはいえないが,包装,困包経費の軽減および海損,盗難荷役中の事故等による貨物損傷の減少等のメリツトがあり,これらが海運以外の貿易関係各方面に広く認められてきたものとみてよい。
  このようにわが国のコンテナ化の計画は41牢の海運造船合理化審議会の答申に基づいて著実に進められてきたが,世界のコンテナ化の進展は目覚ましく,41年答申当時と比較にならないほど,情勢は変化した。この世界の情勢に対処するため,同審議会は44年8月5日,今後の海上コンテナ輸送体制の整備について追加答申した。
  この答申に基づき欧州航路については日本郵船,大阪商船三井船舶が,45年度および46年度の計画造船で1,850個積26ノット船を5隻建造し,46年末からサービスを開始する予定である。この航路には欧州諸国も新造船19隻(英国8隻,西独4隻,オランダ2隻,スカンサービス4隻,フランス1隻)を投入し,46年秋からサービスを開始することになっているので,当初からかなりの競争が予想される。なお,使用されるバースは外国においては,それぞれの国の海運会社が,日本においては日本の海運会社が整備し,相互に使用するということで準備を進めている。
  ニユーヨーク航路についてはわが国海運会社が協力してウイークリー・サービスの効果を発揮させるため,1共同体として運営を行なうことになつており,関係5社がその具体化について検討している。
  また,加州航路の増配については,シアトル・バンクーバー航路の輸送実績ツーランド社の30ノツト船の動向も勘案しながら輸送需要に応じ増便を実施することとなつており,関係6社がその具体化について検討を進めている。
  なお,対米航路においては,シーランド社がU.Sラインのコンテナ船16隻をチヤーターし,前述の超高速新造船を加えて船隊を整備する計画を進めており,さらにシートレイン社が26ノツト新造船2隻を投入する計画を発表しているほか,アメリカン・メール・ラインのシアトル・バンクーバー航路が予定されるなど米船の進出が目覚ましく,わが国海運にとつて,将来の見通しは必ずしも楽観できない。これらのコンテナ輸送体制の整備に当つては,従来の定期航路運営と比較して,多大の投資を必要とするが,さしあたりコンテナ化を必要とする航路について47年度までに約1,600億円の膨大な資金が必要で,関係海運会社のいつそうの合理化と国の強力な施策が必要である。
  さらに,コンテナ化の進展に伴い50年度までの所要コンテナバースは京浜地区17バース,阪神地区16バース,伊勢湾地区6バース,計39バース程度と見込まれており,京浜,阪神それぞれの外貿埠頭公団により着々と整備されている。


表紙へ戻る 次へ進む