2 港湾管理者財政


  港湾取扱貨物量の増大に対処すべく港湾整備5カ年計画によつて港湾の整備が急速に進められているが,これに伴い港湾管理者の港湾整備費負担額も増加し,港湾管理者財政の健全化には,依然として困難な状況にある。
  以下,港湾管理者財政の状況を分析し,財政収支の改善への方策を検討することとする。

(1) 官庁会計方式による収支

  43年度における主要8港(東京港,川崎港,横浜港名古屋港,大阪港,神戸港,下関港及び北九州港をいう。以下同じ。)の管理者財政の概況を官庁会計方式によつてみれば 〔II−(III)−7表〕のとおりで歳出総額は399億7,100万円で,対前年比19%増使用料等の収入は,108億7,900万円で,対前年比15%増となつている。財源構成比をみると,使用料等の歳出に占める割合は27%となつており,前年度における28%を若干下廻つている。残りの部分は一般財源繰入れ,公債,国庫負担金,県市負担金,受益者負担金によつて賄つているわけであるが,この内訳は一般財源繰入れが112億7,600万円で29%,公債が107億800万円で27%,国庫負担金等が71億800万円で18%となつており,一般財源繰入れと公債に依存する度合が強いことを示している。

 イ 歳出

      歳出の内訳は 〔II−(III)−8表〕でみるとおり,基本施設整備費は155億8,100万円で対前年比13%の増,機能施設整備費は66億9,800万円で対前年比45%の増,管理費は66億4,200万円で対前年比13%の増,公債費は80億800万円と対前年比19%の増とそれぞれ増加を示している。
      次に歳出におけるこれらの構成比をみると,基本施設整備費39%,機能施設整備費17%,管理費17%,公債費20%となつており,約56%が施設整備費にあてられている。

 ロ 歳入

      使用料等の収入の内訳は,施設使用料及び役務利用料が87億9,800万円で対前年比17%の増,水域占用料等が2億4,400万円で対前年比14%の減となつている。
      収入における構成比をみると,施設使用料及び役務利用料が81%とその殆んどを占め,残りは水域占用料,土砂採取料,埋立免許料等となつている。

(2) 企業会計方式による収支

  以上の官庁会計方式では単に収支計算を示すだけであるから,港湾管理者の損益を明らかにするため43年度の経常収支(経常収入として施設使用料と役務利用料,経常費用として人件費,庁費及び維持補修費の管理費,公債利子並びに減価償却費を考える。)を企業会計方式によつてみることとする 〔II−(III)−9表〕。これによれば,43年度においては使用料収入(施設使用料及び役務利用料)は87億9,800万円で対前年度比17%の増加を示したが,他方総費用も145億1,900万円と対前年度比12%増加したため,損益率は前年度より若干よくなつたものの39%にとどまつている。
  なお,公債利子は40億2,900万円と対前年度比11%の増加を示し総費用に占める割合は28%と依然として高い水準を示している。

(3) 財産基盤改善への方策

  企業会計方式による収支をみると,昭和40年度以降ようやく管理費は施設使用料および役務利用料によつてまかなわれているが,具体的には港湾管理者財政はなお大巾な赤字を示している。
  赤字原因は,年々増大の一途にある港湾取扱貨物量に対応するため投資される港湾施設の建設費用相当分(公債利子及び減価償却費)の増大にあり,その財源の確保が必要である。
  運輸省では港湾管理者財政の赤字を解消するため,諸々の方策を検討したが,本年5月にその一環として,港湾法の一部改正により港湾整備に民間資金の導入を図る制度を採用した(第4章第2節参照)。


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