1 開発の概況
臨海部に立地する企業は,鉄鋼,石油精製,石油化学,造船,機械などの重化学工業から,食品,木材関連工業まで多種にわたつているが,いずれも原材料を海外へ依存しており,また,海上輸送の利便等の観点から港湾を中心とした臨海部への立地を必要としている。
したがつて,これら臨海立地型の企業が今後ますます発展していくためには,立地条件がすぐれ,かつ,計画的に広大な用地の取得が可能な臨海工業用地の造成を強力に推進していくことが必要となる。
さらに新全国総合開発計画にも指摘されているとおり,今後わが国の鉄鋼,石油精製,石油化学等の基幹産業の生産規模は経済の成長に伴いますます拡大し,また工場の設備規模は激化する国際競争に対処するためスケールメリツトを追つて飛躍的に増大するものと予想され,これらの企業を立地させるためには新たに3,000〜1万haの大規模な用地等を備えた大規模工業港の開発が必要となる。
また地域格差を是正し,国土の均衡ある発展を図るため新産業都市,工業整備特別地域等の工業開発拠点の整備が行なわれているが,臨海工業用地の開発はその中心的役割を果すものとして地域開発に大いに貢献している。
こうした臨海工業地帯の開発の重要性に鑑み,運輸省においては,全国的視野から臨海部の工業適地を選定し,臨海工業用地の造成を促進している。また,大規模工業港については,用地,港湾,用水の三大条件を満足する候補地点を選定し,昭和50年度までにそのうち6カ所(苫小牧新港,むつ小川原,秋田湾中南勢,周防灘,志布志)の整備に着手することとしており,44年度には周防灘において自然条件調査および土地造成計画調査を実施した。
臨海部における土地の造成については,以上の臨海工業用地のほかに,港湾都市における海上出入貨物量の増大に対処するための流通用地,交通用地,既成市街地の過密緩和および都市の生活環境改善のため公共用地,公園緑地等の都市再開発等用地の造成を進めており,36〜44年度までに3,445万m2の造成を行なつた。
これらの臨海部の土地造成については,運輸省は43年度を初年度とする5か年計画 〔II−(III)−13表〕を策定し,43〜47年度の5カ年間に臨海工業用地1億9,000万m2(うち民間造成分2,000万m2),都市再開発等用地4,600万m2の造成を行なうこととし,これに基づき事業の促進を図つており,44年度までの進捗率は34.6%となつている。
なお,臨海部の土地造成事業は港湾計画との関連から港湾管理者により実施されているのがほとんどであり,運輸省は,港湾管理者に対し港湾整備促進法に基づき地方債のあつせんを行なつている。
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